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【おいしい韓国映画・ドラマ】
『マルモイ ことばあつめ』の「ホットク」 

 最高気温が氷点下になることも珍しくない冬の韓国・ソウル。そんな寒い日に食べたくなるのが、韓国屋台の定番おやつ「ホットク」です。小麦粉で作った生地の中に、黒砂糖の蜜が入った、いわば韓国風おやき。目の前の鉄板でジューッと焼かれ、熱々の状態で提供されます。韓国では昔から食べられてきたおやつで、1940年代の京城(日本統治時代のソウルの呼称)を舞台にした映画「マルモイ ことばあつめ」(2020年日本公開、オム・ユナ監督・脚本)にも登場しています。

 第6回 『マルモイ ことばあつめ』の「ホットク」 

Ⓒ2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

 日本語の使用が強要されていた日本統治時代。親日派の父を持つジョンファンが代表を務める「朝鮮語学会」は、失われていく母国語を守るため、朝鮮語の辞書づくりに奮闘していました。

 そんな中、盗みなどで生計を立てていたお調子者のパンスが、息子の授業料を支払うため、ジョンファンのカバンを盗みます。その事件がきっかけで、朝鮮語学会の雑用係として働くことになったパンス。これまで学校に通ったことがなく、読み書きすら出来なかったパンスは辞書づくりを通じ、母国語の大切さに気づいていきます。

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 映画のタイトルである「マル」は言葉、「モイ」は集めるという意味です。朝鮮語学会は辞書に掲載するため、10年をかけて膨大な量の「マル」を集めてきました。しかし、日本語を普及させたい朝鮮総督府が、ジョンファンらの辞書づくりをしつこく妨害してきます。ちなみに、朝鮮語学会は実在した組織で、1942年に同会の学会員たちが検挙された「朝鮮語学会事件」が物語のもとになっているそうです。

 そうした妨害に屈することなく、「言葉は民族の精神を持った器」と言い切る学会員たち。そして、ジョンファンの命令で、パンスも朝鮮語を一から学ぶことになります。徐々に文字を覚え、街を歩きながら、「アメ」「菓子」「革靴」と看板に書かれている文字をうれしそうに読み上げていくパンス。小説に夢中になるうち、気付いたら夜が明けていたという場面も印象的でした。

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 映画の中で、ジョンファンがまだ幼いパンスの娘にホットクを差し出し、「なぜホットクっていうか知ってる?」と尋ねます。そして、「ホットクには、中国から伝わってきた餅という意味があるんだ」と、その由来を説明するのです。言葉というのは、その国の歴史や文化を体現するもの。決して絶やしてはならないと感じさせられるシーンです。

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 ジョンファンが説明したとおり、ホットクの「ホ」は漢字で「胡」と書き、中国のこと。そして、「トク」は餅を指し、「中国の餅」という意味になります。ホットクは19世紀末に中国(清)から渡った人たちによって伝わったとされ、20世紀初頭には韓国全土で食べられるようになりました。

 現在のホットクはたっぷりの油で揚げるように焼き、サクサクした食感が特長ですが、当時は油を使わずに焼いていたそうです。時代とともに韓国人の好みに合ったスタイルへと変化していき、定番の黒砂糖の蜜入りのもの以外にも、チャプチェ入りの野菜ホットク、ナッツが入った釜山名物のシアホットクなどさまざまなバリエーションがあります。


(イメージ画像)

 また、1990年代に入ると、日本でも東京・新大久保のコリアンタウンなどでホットクを出す屋台が現れました。あんこやチーズ入りなど、日本人の舌に合わせたオリジナルメニューも人気を呼び、今ではすっかりコリアンタウンの定番になっています。中国から韓国、そして日本へと伝わり、その土地に合わせた変化を遂げてきたホットク。そんな歴史に思いをはせながら、味わってみるものいいかもしれません。

【作品情報】

「マルモイ ことばあつめ」

製作年 2019年

製作国 韓国

監督・脚本 オム・ユナ

出演 ユ・ヘジン、ユン・ゲサン、キム・ホンパ、ウ・ヒョンほか

Ⓒ2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

発売元・発売元 インターフィルム

価格 4180円(DVD)、5280円(Blu-ray)

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は更新時点のものです)

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