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印象派【上】 国立西洋美術館

欧州で買い付けた先端アート

クロード・モネ「睡蓮」<br>1916年 油彩
クロード・モネ「睡蓮」
1916年 油彩
クロード・モネ「睡蓮」<br>1916年 油彩 ポール・セザンヌ「葉を落としたジャ・ド・ブッファンの木々」<br>1885~86年 油彩

 明るい色彩と大胆な構図で、日本でもファンが多い印象派。19世紀後半、彼らは西洋美術のタブーに挑んだ、とてもアバンギャルドな存在だったんです。

 西洋美術史の中で印象派が果たした役割を学べるのが、国立西洋美術館の松方コレクション。モネの作品は15点、セザンヌは6点と、国内でも有数の収蔵点数を誇ります。大正時代、実業家松方幸次郎は、日本に本格的な西洋美術館を開くべく、ヨーロッパで美術作品をたくさん買い集めました。モネの「舟遊び」やピサロの「立ち話」など、完成度の高い作品もいくつかあります。

 中でもひときわ目を引くのは、2メートル四方の「睡蓮(すいれん)」。モネは晩年、睡蓮を題材に200点以上の絵を描きました。白内障を患っていたせいか、筆遣いはぼやけて抽象的です。でも水面に揺らめく花を鮮やかに切り取ったクローズアップは、当時はとても斬新で、最先端だったんですよ。モネと親交があった松方は、フランス北部・ジベルニーのアトリエを訪れ、直接この絵を購入したようです。

 一方、セザンヌは印象派から離れ、晩年は、構図やデッサンに重きを置くフランス絵画の原点に回帰しようとした。写真下の作品も構図がしっかりしています。

(聞き手・中村茉莉花)

 ★アートの目利きが、美術館のコレクションをテーマごとに紹介します。


 松方コレクション

 川崎造船所(現・川崎重工業)の初代社長、松方幸次郎(1865~1950)が、1916(大正5)年から約10年にわたり、ヨーロッパで収集したコレクション。19世紀半ばから20世紀初頭にかけてのフランス近代美術と、ロダンの彫刻からなる。一部が核となり、59(昭和34)年、国立西洋美術館が誕生。印象派の作品は、ほかにルノワール11点、ピサロ5点、ドガ2点など。

《国立西洋美術館》 東京都台東区上野公園7の7。午前9時半~午後5時半(常設展は(金)(土)8時まで。入館は30分前まで)。(月)((祝)(休)の場合は翌日)休み。430円(常設展)。紹介した2作品は、5月28日まで展示中。

木村泰司さん

西洋美術史家 木村泰司さん

きむら・たいじ 米カリフォルニア大やロンドンのサザビーズ美術教養講座で学ぶ。講演やセミナーを通し、アートの魅力を広めている。著書に「印象派という革命」「名画は嘘をつく」など。

(2017年4月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)