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印象派【下】 ポーラ美術館

絵画の流れを体系的に概観

ピエール・オーギュスト・ルノワール「レースの帽子の少女」<br>1891年 油彩
ピエール・オーギュスト・ルノワール「レースの帽子の少女」
1891年 油彩
ピエール・オーギュスト・ルノワール「レースの帽子の少女」<br>1891年 油彩 エドガー・ドガ「休息する二人の踊り子」<br>1900~1905年ごろ パステル

 印象派の作品を体系的に見渡すことができるのは、今年で開館15周年のポーラ美術館のコレクション。23歳でポーラの社長となった鈴木常司(1930~2000)は美術好きで知られ、1950年代後半から1万点近くの美術品や化粧道具を収集しました。

 19世紀から20世紀までの西洋近代絵画が充実しており、特に印象派は、モネ19点、ルノワール16点、ドガ9点など全部で約400点を収蔵。後期印象派やフォービズムの作品も多く、印象派がフランス絵画に与えた影響を概観できます。

 その中から、ルノワールとドガの作品を見てみましょう。労働者階級出身で、磁器の絵付け職人を目指したルノワールは、少女や裸婦など人物画を得意とし、当時台頭してきたブルジョアジーの肖像などを、明るい色彩で描きました。

 対照的に、銀行家の息子だったドガが描いたのは、バレリーナや娼婦(しょうふ)など、労働者階級出身の人々。階級社会だった当時のフランスで、自分とは異なる階級の人々の風俗は、画家の目に新鮮に映ったのでしょう。座る踊り子たちを大胆に切り取った構図からは、浮世絵の影響も見て取れます。

 絵を見ると、描かれた当時の社会背景や画家の生い立ち、人間性まで見えてきて、興味は尽きません。

(聞き手・中村茉莉花)


 ポーラ美術館コレクション

 ポーラ創業家2代目の鈴木常司が、四十数年間にわたり収集したコレクション。西洋絵画から日本画、版画、ガラス工芸、古今東西の化粧道具まで、総数は1万点に及ぶ。2002年にオープンしたポーラ美術館は箱根の森の中でゆったりと作品鑑賞を楽しめる。

《ポーラ美術館》 神奈川県箱根町仙石原小塚山1285。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。展示替えのための臨時休館あり。1800円。「レースの帽子の少女」は9月24日まで展示中。「休息する二人の踊り子」は10月1日から始まる企画展で展示予定(途中、展示替えあり)。

木村泰司さん

西洋美術史家 木村泰司さん

きむら・たいじ 米カリフォルニア大やロンドンのサザビーズ美術教養講座で学ぶ。講演やセミナーを通し、アートの魅力を広めている。著書に「印象派という革命」「名画は嘘をつく」など。

(2017年4月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)