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バルビゾン派【上】 山梨県立美術館

ミレー70点中心に名作がそろう

ジャン・フランソワ・ミレー「落ち穂拾い、夏」(油彩・麻布、1853年)
ジャン・フランソワ・ミレー「落ち穂拾い、夏」(油彩・麻布、1853年)
ジャン・フランソワ・ミレー「落ち穂拾い、夏」(油彩・麻布、1853年) ジュール・ブルトン「朝」(油彩・麻布、1888年)

 パリから南東へ約60キロメートルの、風光明媚(めいび)なフォンテーヌブローの森。1820年代から19世紀半ば、森に近いバルビゾン村に滞在・移住して、自然や農村を描いた画家たちがいました。コローやルソー、ミレーらを総称して、「バルビゾン派」と呼びます。

 ミレーの作品70点を核に、彼らの作品を所蔵するのが、山梨県立美術館。「自然豊かな山梨は日本のバルビゾン」と約40年前から質の高い作品を集めてきました。

 「落ち穂拾い、夏」を見てください。近代欧州の農村では、小麦収穫の際、貧しい人々のために一部の穂を残しておきました。ミレーは、落ち穂を拾う農民に焦点を当てています。また、背景に積まれたワラの山は、手前の人間と比べると6~7メートルはあるでしょうか。動力が無かった頃の労働の大変さも読み取れますね。

 もう一作はブルトンを選びました。彼も「落ち穂拾い」を主題にした多くの絵を残しましたが、ミレーとは農民の描き方が対照的です。ミレーは顔を見せずに普遍的な農民の姿を表しましたが、ブルトンは力強い表情で一人の人間の個性を描きました。「朝」も女性の存在感があり、好きな作品です。

 10月から、仏で開催されるミレー展に「落ち穂拾い、夏」を貸し出すそうです。しばらく見られなくなる前に足を運んでみてはいかがでしょう。

(聞き手・笹木菜々子)


 どんなコレクション?

 山梨県立美術館の所蔵品は、ミレーを中心としたバルビゾン派やヨーロッパの風景画、日本の近現代美術品など、現在一万点を超える。ミレーの「種をまく人」と「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」は、1977年に米国のオークションで購入。翌年の78年、置県百年記念事業として同館が開館した。

 「落ち穂拾い、夏」は9月10日まで、「朝」は原則通年、同館内のミレー館で展示している。

《山梨県立美術館》 山梨県甲府市貢川1の4の27(TEL055・228・3322)。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。510円(コレクション展)。(月)((祝)の場合は翌日)、(祝)の翌日((日)は除く)休み。

小泉順也さん

一橋大准教授 小泉順也さん

こいずみ・まさや 専門はフランス近代美術史。東京大・教養学部卒業、同大学院博士課程修了。博士(学術)取得。一橋大・大学院で美術史、学芸員資格の授業を担当。山梨県立美術館などで講演会を開催。「ヴュイヤール ゆらめく装飾画」の翻訳を監修。

(2017年5月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)