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バルビゾン派【下】 山寺 後藤美術館

故郷と重なる仏風景画を収集

コンスタン・トロワイヨン「牛と羊のいる風景」(油彩・キャンバス)
コンスタン・トロワイヨン「牛と羊のいる風景」(油彩・キャンバス)
コンスタン・トロワイヨン「牛と羊のいる風景」(油彩・キャンバス) シャルル・フランソワ・ドービニー「池の夕暮れ」(油彩・キャンバス)

 天台宗の古刹(こさつ)、立石寺(りっしゃくじ)で知られる山形市山寺にバルビゾン派を堪能できる美術館があるのをご存じでしょうか。山寺後藤美術館は、ジュエリー エスジー・ゴトーの創業者、後藤季次郎(すえじろう)氏(85)が創設しました。後藤氏は自ら絵筆を握るほど美術に関心が深く、故郷の山形県河北町を思わせるフランスの風景画に惹(ひ)かれて、絵画の収集を始めたそうです。

 今回は、山寺後藤美術館に展示されている作品から、一風変わった個性を持つ2人の画家を取り上げました。

 トロワイヨンは磁器職人の家に生まれ、絵付けをしながら絵画を学びました。1847年に訪れたオランダで見た絵画に影響を受け、動物のいる風景を描き始めます。「牛と羊のいる風景」でも、品種が違う様々なウシや、ヒツジが描かれている。面白いのが、中央付近の茶色いウシの視線。こちらを見つめているようで、異様に感じませんか?

 「池の夕暮れ」を描いたドービニーは、画材を積み込んで屋根を付けたアトリエ船を造って、船上からオワーズ川や岸辺の情景を描いた画家です。彼はクロード・モネと交友があり、印象派を支持する立場を取りました。

 野外に出て、自然の姿をリアルに描いたバルビゾン派。自然の光を捉えた印象派の先駆けとなる、重要な風景画を残しました。

(聞き手・笹木菜々子)


 どんなコレクション?

 後藤季次郎氏が長年収集した個人コレクションから、常時110点を展示。バルビゾン派、カバネルやエンネルなどアカデミズムの名品を核に、アール・ヌーボーのガラス工芸品、彫刻も所蔵する。現在、ミレーの「庭にて」など主要60作品は、長野県信濃美術館「花ひらくフランス風景画」展(6月18日まで)へ貸し出し中。山寺後藤美術館での展示再開は7月初旬ごろ。

 「牛と羊のいる風景」と「池の夕暮れ」は、来年2月上旬まで展示予定。

《山寺後藤美術館》 山形市山寺2982の3(TEL023・695・2010)。午前9時半~午後5時半(入館は30分前まで)。800円。(月)((祝)の場合は翌日)休み。

小泉順也さん

一橋大准教授 小泉順也さん

こいずみ・まさや 専門はフランス近代美術史。東京大・教養学部卒業、同大学院博士課程修了。博士(学術)取得。一橋大・大学院で美術史、学芸員資格の授業を担当。山梨県立美術館などで講演会を開催。「ヴュイヤール ゆらめく装飾画」の翻訳を監修。

(2017年5月30日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)