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名作椅子【下】 富山県美術館

個性的なデザインを見る

ヘリット・トーマス・リートフェルト「レッド・アンド・ブルー」(1918~23年、製造は90年代) ブナ材 塗装仕上げ
ヘリット・トーマス・リートフェルト「レッド・アンド・ブルー」(1918~23年、製造は90年代) ブナ材 塗装仕上げ
ヘリット・トーマス・リートフェルト「レッド・アンド・ブルー」(1918~23年、製造は90年代) ブナ材 塗装仕上げ フランク・オーウェン・ゲーリー「ウィグル・サイド・チェア」(1972年、製造は2000年代) ハニカムボード

 名作椅子と言われるものの中には、素材や製造技術、フォルム、思想など、歴史上で記念碑的な作品があります。その中から個性的なデザインの椅子を、富山県美術館の所蔵品で紹介します。

 同館は、近現代の名作椅子をコレクションの柱の一つと位置づけ、1990年から本格的に収集してきました。ビンテージではなく、収集時点で製造されていたものを所蔵しているのが特徴です。

 その一つが、オランダ出身の建築家ヘリット・トーマス・リートフェルト(1888~1964)の「レッド・アンド・ブルー」。1910年代後半から30年代にかけて、オランダで起こった芸術運動「デ・スティル」の象徴的な作品です。この運動は、画家や建築家らが装飾を排し、垂直や水平線によって分割、構成された幾何学的で抽象的な表現を追究しました。本作は、その中心的存在だったピエト・モンドリアンの絵画に影響を受けています。

 一方、アバンギャルドなデザインで目を引くのは、カナダ出身の建築家フランク・オーウェン・ゲーリー(1929~)の「ウィグル・サイド・チェア」です。素材の段ボールを成形合板の技術を応用して重ね、内部に鋼棒や木材を入れて強度を確保しています。

 どちらの椅子もユニークでインパクトがあり、アート作品に近いですね。

(聞き手・牧野祥)


 どんなコレクション?

 19世紀半ば以降に生産された欧米や日本の椅子を中心に、約170種類を所蔵。そのほか、ポスター約1万3千点、ロートレックやピカソらの絵画、棟方志功の版画など20世紀以降の美術作品約2500点も。前身の富山県立近代美術館を移転新築。今年3月に一部が開業しており、8月26日に全館オープンする。「レッド・アンド・ブルー」と「ウィグル・サイド・チェア」を含む椅子約50種類を、26日~11月14日に展示。

《富山県美術館》 富山市木場町3の20(TEL076・431・2711)。午前9時半~午後6時(8月26日は1時から。入館は30分前まで)。300円(コレクション展)。30日と(祝)を除く(水)、原則(祝)の翌日、25日休み。

織田憲嗣さん

椅子研究家 織田憲嗣(のりつぐ)

 1946年生まれ。東海大名誉教授。20代から椅子を集め始め、現在、20世紀欧米を中心とした椅子約1300種類を含む家具、日用品などを所有する。その一部を、北海道東川町の町文化芸術交流センター、旭川市のチェアーズギャラリーで常設展示。

(2017年8月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)