目利きのイチオシコレクション

肖像写真【下】 島根県立美術館

人物をオブジェのように配置

  • 奈良原一高「亀倉雄策 グラフィック・デザイナー」 1985年 ゼラチン・シルバー・プリント
  • 奈良原一高「森英恵 ファッション・デザイナー」 1985年 ゼラチン・シルバー・プリント

 地方美術館では珍しく、総合的な写真作品の収集に努めているのが島根県立美術館です。山陰ゆかりの写真家にも力点を置き、奈良原一高(1931~)をはじめ、故塩谷定好(しおたにていこう)や森山大道らの作品を多く持っています。コレクション展はレベルが高いですよ。

 現在開催中の展覧会では、戦後を代表する写真家の一人、奈良原の「肖像の風景」シリーズ124点を展示しています。奈良原は、戦後盛んになったリアリズム写真に対抗し、個人的な表現を目指して59年に結成された写真家集団「VIVO」のメンバーでした。現実の世界を、あくまでも主観的な見方で切り取るという姿勢。本人は「パーソナル・ドキュメント」という言葉を使っています。

 「肖像の風景」は、80年代に各界のリーダー30人を写した作品群。奈良原が本格的に取り組んだポートレートです。被写体を、仕事や人間像を踏まえながら空間の中に配置し、オブジェのように捉えています。

 グラフィック・デザイナーの故亀倉雄策を写した写真は、亀倉が83年に制作した平和を呼びかける「ヒロシマ・アピールズ」のポスター「燃え落ちる蝶(ちょう)」を背景に撮っています。ファッション・デザイナーの森英恵は、「ハナエ・モリ」ビルのショーウィンドーであたかもマネキンのようですよね。人間と、彼らを取り巻くものや建物などを等価に見ているのだと思いますね。

(聞き手・牧野祥)


どんなコレクション?

 絵画や版画、工芸などの作品4655点、資料1243点を所蔵する。そのうち、写真作品は2210点で、19世紀から現代までの国内外の作品が充実。松江藩9代藩主だった松平斉斎(なりよし)が写真機を購入させたという歴史や、著名な写真家が輩出した山陰の土地柄にちなみ、収集に力を入れてきた。美術館の開館は1999年。

 紹介した2点は、5月7日まで開催のコレクション展「受贈記念 奈良原一高《肖像の風景》」で展示。

《島根県立美術館》 松江市袖師町1の5(TEL0852・55・4700)。午前10時~午後6時半(3~9月は日没後30分まで。入館は30分前まで)。コレクション展は300円。5月1日を除く(火)休み。

写真評論家 飯沢耕太郎

飯沢さん

 いいざわ・こうたろう 日大芸術学部写真学科卒、筑波大大学院芸術学研究科博士課程修了。著書に「写真美術館へようこそ」「深読み! 日本写真の超名作100」「キーワードで読む現代日本写真」など。公募展の審査や写真展の企画も手がける。

(2018年2月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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