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傘はファッション

 2月にブランド創立20周年を迎えたワールドパーティ(Wpc.)。

 キラキラとしたホログラムが心を弾ませる「シャイニーアンブレラ」などバズる傘を何本も制作し、傘業界に旋風を起こしています。日用品という位置づけから「傘はファッション」と新しいメッセージを掲げる今、広報担当の中村友香さんにお話を伺いました。

 

 

――どんな背景から、傘はファッションというメッセージを発信することになったのでしょうか?

 傘は、雨が降った時に必要なものという方がほとんどかと思います。傘を購入する方に尋ねると、日用品として使うための傘の所持数は平均1~2本。急な天気の変化で駅やコンビニで手軽に買えるビニール傘で済ませる人や、もう何年も同じ傘を使っているという方も多いことがわかりました。そんな傘を、シーズンや場面、ファッションに合わせて、楽しめるアイテムとしてご紹介したいと考えました。

 

――御社の考えるファッションについてお聞かせください。

 洋服やバッグと同じように、ご自身の個性をいかし、心が踊るものだと考えています。傘も自分らしさを表現できるファッションアイテムのひとつ、そう信じています。

 

――傘で自分らしさを表現するとは?

 弊社では年間300種類の傘をデザイン、販売しています。年齢や性別を問わずバラエティーに富んだ品揃えが自慢で、傘を選ぶ楽しさも提供しています。無地から、ストライプやカラフルな花柄、アニメやキャラクターのデザインをあしらったものなど様々です。最近では、ペットボトルをリユースした生地を使い、自然界にある植物や水からインスピレーションを受けた配色の傘も手がけました。

 

 

 レース風のデザインやチューリップのような形のものなど、「かわいい」にも色々種類があると思っています。傘という多種多様な人が使うアイテムに落とし込むために、ぱっと目をひくような印象的なデザインでありながら、多くの人に愛される柄になるよう仕上げられています。

 たとえば「ピオニ」は、Wpc.を代表するデザイン。大ぶりのボタンの花が咲き乱れる様子を表現し、花の大きさ、配色を工夫しました。とがりすぎると持ちにくい、万人受けしすぎると人とかぶってつまらない、Wpc.らしさを追求しながら、持っていて心が踊る楽しい傘を作っています。

 

――なるほど、Wpc.らしさについてもう少し教えていただけますか?

 「ちいかわ」など人気のキャラクターとコラボした傘もたくさん作っています。ロフトなどで販売していますが、手に取った際にぜひキャラクターをよく観察してみてください。キャラクターがレインコートを着ていたりと、雨のシーンをイメージしたイラストになっています。キャラクターグッズはどこでも展開しているので、どうしたらオリジナル性を出せるのかを常に考えています。

 

――年間300種類ものデザインはどんな発想から生まれるのでしょうか?

 8人のデザイナーを中心に新商品を作っています。通勤時間に見かける人の持ち物を観察するなど、街中でリサーチしています。雑誌やSNSもよく見ています。デザイナー以外でも新商品を手がけることがあります。アニメやキャラクターが大好きな営業担当のスタッフが手がけたものもあります。

 

 実は私も昨年、クリームソーダを表現した傘を作ったんです。若い年代にレトロな喫茶店が注目されていることからヒントを得ました。この傘はビニール傘の透明感がクリームソーダの爽快感とマッチするところから作られました。ビニール傘は、繊細なデザインのプリントが得意です。透け感のあるクリームソーダの質感にぴったりで、傘を開いたときにきれいなグラデーションを作ることができました。

 トレンドや流行を意識してデザインから商品化まで4か月程度で製作を行ったことも。スピードを重視しています。私たちも新しい傘のデザインが生まれるのを楽しみにしているんです。

 

 

 
旅する喫茶×Wpc. クリームソーダアンブレラ

 

左から、ブルー「青空のクリームソーダ」、グリーン「新緑のクリームソーダ」、ピンク「夕焼け空のクリームソーダ」、
オレンジ「金木犀のクリームソーダ」、パープル「夜明け前のクリームソーダ」

 

――傘のデザイン、閉じたままだとイメージしにくい感じがします

 傘は、閉じたままで売られていることが多く、開いてみないとどんなデザインかわからないことが多いですよね。でも何本ものの傘を開いたり閉じたりするというのはちょっと一手間だと思いませんか。そこで、閉じたままでも、どんな傘なのかタグを見ただけでイメージがわいて世界観が伝わるように工夫しています。

 たとえば、折りたたみ用のクリームソーダデザインの傘は、閉じたときにクリームソーダそのものに見えるようにしました。持ち手を丸くしてアイスクリームが乗っているように見せたり、クリームソーダのさくらんぼをモチーフにしたチャーム(飾り)をつけたりしているんです。モネの睡蓮、ゴッホのひまわりなどをモチーフにした名画シリーズでは、美術館のチケットをイメージしたタグをつけるなど、まず手にとってもらうことを意識しています。

 

名画アンブレラは、美術館のチケットをモチーフにしたタグもポイント

 

――選ぶのにちょっと迷いそうです

 店舗だけでなくオンラインショップもあるのですが、傘の機能面はどうしても文字と写真だけだと伝わりづらいので、日常に近い使用例を意識して購入者に寄り添った見せ方をするようにしています。

 コロナ禍では店舗が一時的に休業したり、傘の売り上げが大幅に落ちたりしてしまったんです。日本の高品質でデザイン性の高い傘を求めるインバウンドのお客様がいなくなったことも要因で、国内で傘を売るにはどうしたらいいかスタッフみんなで考え、一つひとつブランドを勉強し直して、きちんと商品を理解した上でお客様に提案できるようにしました。その経験を経て、社内のスタッフがモデルになって自分の服に合わせた傘とのコーディネートの提案もしています。

 

名画アンブレラ 「クリムト/フラワーガーデン.」

 

――傘への愛着を感じます!

 弊社のスタッフの傘所持数は折りたたみも合わせて平均4~5本、ファッションに合わせてその日に持つ傘を変えているスタッフも。社内では至る所で傘談義が行われています。たとえば渋谷のスクランブル交差点には定点カメラがあってテレビで天気予報などにあわせて映しだされていますよね。大阪だと心斎橋やグリコの看板前でしょうか?雨の日だと1回に何千人が通る交差点はかっこうのマーケティングスポット。リサーチとともに、Wpc.の傘がどのくらい使われているか、食い入るように見てしまいます。近い将来、雨の日には色とりどりのWpc.の傘が見られるといいなと思っています。

 

(聞き手・佐藤直子)

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