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本仮屋ユイカ スマホの中に気持ちも演技も凝縮

1話数分のドラマに初挑戦

 1話の長さが2、3分で電車を待つ間、トイレの中といったちょっとした時間でも楽しめる配信の「ショートドラマ」が注目されている。一つの作品としては数十話で物語が展開する。スマートフォンのアプリで見るので、テレビや映画と違って映像が縦長なのも特徴だ。俳優の本仮屋ユイカさんは「悪い女」(BUMPで配信中、全20話)でショートドラマに初めて挑戦した。
 
男性が殺害された事件の犯人捜しがメインテーマで、夫殺しの疑いをかけられている藤堂玲花を演じる。「誰かの顔色をうかがったり気遣ったり、そんなことを一切しないジコチュウな女でいることを大事にした」と話す。
 
主演の依頼を受けたとき、1話の短さに戸惑った。「どちらかと言えばスロースターターだし、撮影期間中、演じ続けるなかで役を練り上げるのが好きなので、たぶん苦手だろうなと」。オファーを受け入れたのは監督が御法川修さんだったから。テレビ東京のドラマ「私の夫は冷凍庫に眠っている」で仕事を共にし、俳優の考えを大切にする姿勢に信頼を寄せる。
 
撮影が始まった最初の感想は「カメラが縦に構えている!」。経験のない現場で必要だったのが、カメラが回った途端に演技のギアをトップに入れること。徐々に気持ちをつくる時間はない。撮るのはもっとも感情が高ぶった場面ばかり、見せ場の数珠つなぎ。
 
 
 
「いきなりトップギア」のため、メイクを直している時、食事をしている時、カメラが止まっていてもスタッフに「玲花さん」と呼んでもらっていた。普段の現場ならスタッフは「本仮屋さん」と呼ぶ。「本仮屋に戻らずにすみ、演技が深まるスピードが速まった。ほかの撮影もまねてほしい」と笑う。
 
ショートゆえにドラマの構成はシンプルで登場人物も多くはない。玲花と関わる人物は限られ、いろんな人との関係から主人公の多面性や複雑な心情を表現する機会はない。物語の背景も細かいところまで説明しない。「でも、ドラマになくてもそれぞれの人物には積み重ねたそれぞれの人生がある。描かれていない時間を埋める作業を監督と丁寧にした」と振り返る。
 
縦長という映像の形も面白く感じた。幅がある横長と違い、縦長は複数の人物を一つの場面に収めることが難しく、せりふを語っている一人だけ映っていることが多い。視聴者は小さなスマホの画面で見るので、胸より上のアップで撮る。体全体を使った身ぶりで演じるのではなく、顔の向き、瞬きの回数といった微細な演技が大事だった。
 
ショートドラマの撮影を通じて、数分という短さの中にも通常のドラマに負けない情報量が詰め込まれていると実感した。「きっと視聴者は集中して見てくださるでしょうし、ドラマでは語られていない部分にも想像を膨らませてもらえたら」と話す。
 
 
 
本仮屋ユイカ(もとかりや・ゆいか) 1987年生まれ、東京都出身。10歳で子役としてデビュー。テレビドラマ「3年B組金八先生」シリーズや「世界の中心で、愛をさけぶ」で注目され、NHKの連続テレビ小説「ファイト」に主演。TBSラジオ「地方創生プログラム ONE―J」でMCを務め、YouTube公式チャンネル「ユイカのラジオ」を配信。
 

ショートドラマを配信するBUMP

https://lp.bump.studio/