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家族を超えた愛を描く 映画「おいしくて泣くとき」
横尾初喜監督インタビュー

孤独だった2人の初恋と交わした約束、そして突然の別れ。30年の月日を経て明かされた彼女の秘密とは――。“互いの幸せを願う純粋な想い”をまっすぐに描いた映画「おいしくて泣くとき」が4月4日(金)に公開される。多くの読者の心を震わせた森沢明夫さんの同名小説を原作に、人間の心の機微を描いた作品に定評のある横尾初喜監督がメガホンをとりました。監督に作品に込めた思いや、撮影現場での様子を聞きました。


ⓒ2025映画「おいしくて泣くとき」製作委員会

ⓒ2025映画「おいしくて泣くとき」製作委員会


【作品紹介】幼い頃に母を亡くした心也と、家に居場所がない夕花。同級生の2人はひょんなことから「ひま部」を結成し、孤独だった2人が互いに距離を縮めていく。しかし、ある事件をきっかけに夕花は姿を消してしまう。行き場のない想いを抱えたまま、交わした約束を胸に彼女を待つ心也。突然の別れから30年、明かされる彼女の秘密とは……。4月4日(金)から全国公開。

 

  ――今回の映画化のきっかけを教えてください。

オール長崎ロケで映画「こはく」を撮影し、これからも継続的に長崎で映画を撮っていこうと準備を進めていた翌年にコロナ禍へ。何かしたいなと思っていた時にプロデューサーの1人が森沢明夫さんの作品を薦めてくださったのがきっかけでした。森沢さんの作品を読み漁り、「大事なことほど小声でささやく」(2022年に映画化)と「おいしくて泣くとき」は絶対やりたい!と思いました。「おいしくて泣くとき」は恋愛の物語であり、家族の物語でもあるけれど、「家族を超えた愛の成就」が一番惹かれた理由ですね。

作品では、様々な事情を抱えた子どもたちのために無償で料理を提供する“子ども食堂”について取り上げています。偶然ですが、僕の幼なじみが子ども食堂を経営していて、ドキュメンタリーの撮影でその現場を見せてもらったことがあり、その時に、子ども食堂といった愛の形がとても大切だなと感じていました。

 ⓒ2025映画「おいしくて泣くとき」製作委員会

ⓒ2025映画「おいしくて泣くとき」製作委員会


  ――監督は「大事なことほど小声でささやく」の映画化も手がけています。森沢さんとの信頼関係もすでに構築されていましたが、今回も映画化するにあたって大切にされたことは?

森沢さんは映画化をOKした後は、「映像と小説は別物なので、お任せします」というスタンスで、脚本も見ないんです。僕たちのことを信頼してくださっているのはうれしくもあり、ものすごいプレッシャーでもありました(笑)。森沢さんの作品は、所作や行動がビジュアル化されて書かれているので想像しやすい。その中で気になる表現については、「ここの表現はどういう意味ですか?」「この情景はこういうことですか?」とご本人にたくさん質問させていただきました。

あと、森沢さんの作品の登場人物に完全な“悪の人”はいなくて、それぞれの悪にも理由がある。主役の2人も含め、それぞれのキャラクターが持っている背景を、演じる人は自分の中でどのように表現しているか、そしてどう感じながら映画を旅しているかを意識するようにしていました。

  ⓒ2025映画「おいしくて泣くとき」製作委員会

ⓒ2025映画「おいしくて泣くとき」製作委員会



  ――主演の長尾謙杜さん、當真あみさんとは、どのように役作りのお話をされましたか?

長尾君は初めて会った時に「芯が強い子だな」と思いました。空手をやっていたそうで、礼節もちゃんとしている。當真さんは脚本もしっかりと読み込んできていた。2人とも勘がよく、彼らが演じる役についてどう咀嚼していくかは見守っていこうと思ったので、役作りというよりは、まず彼ら自身の話をたくさん聞かせてもらいましたね。「どうやってスカウトされたの?」「いつ沖縄から来たの?」みたいな話とか(笑)。

できる限り、物語の順番通りに撮影できるようにスケジュールを組めたので、撮影が始まってからも「昨日はどのように感じた?」「今日はこんな段取りでやってみてどうだった?」など、とにかく彼らと会話を重ね、「3人でこの映画を旅していこう」と話していました。

 ⓒ2025映画「おいしくて泣くとき」製作委員会

ⓒ2025映画「おいしくて泣くとき」製作委員会

 

  ――若いお二人に加え、安田顕さん、ディーン・フジオカさん、美村里江さんら実力派の方々もいらっしゃいましたが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

若い二人とは違う、いい緊張感を作ってくださったと思います。特に心也の父親役である安田顕さんは原作を深く読み込んでいて、「コップを置く間や、話をする間などもすべてが計算されている原作なので、できるだけ再現したい」と最初から宣言していましたので、緻密にやってくださいました。よく現場で「原作ではこうだったので、こうしてみましょう」と2人で話していましたね。

長尾君も安田さんとの共演を楽しみにしていました。高校1年生ならではの心のモヤモヤを抱いた心也と、息子をそっと見守る父親。2人でそんなに会話を重ねるということはなかったのですが、緊張感がありつつも穏やかで柔らかい雰囲気がすごくいいなぁと思って観ていました。

 

  ――読者へのメッセージをお願いします。

広い意味での「愛」をテーマにしている作品ですので、今何かに悩んでいたり苦しんでいたりする方にこそ観ていただきたいですね。年を重ねても、恋愛の延長にある「愛」は不変だと感じていて、それは若い世代だけでなく、きっと僕たちの世代やもっと上の世代に方にも通ずるものがあると思います。ぜひたくさんの方に観ていただければと思います!

(大和田 真理子)

 


【横尾初喜監督 プロフィール】
よこお・はつき/映画「ゆらり」(2017)で商業映画監督デビューし、以降「こはく」(19)、「達人THE MASTER」 (21)、「こん、こん。」(23)などを手がける。森沢明夫氏の著書を映画化した「大事なことほど小声でささやく」(22)でも監督を務めており、本作で再タッグを組む。オール長崎ロケの「こはく」撮影後には、長崎を盛り上げるため株式会社BLUE.MOUNTAIN の設立に携わるなど、多方面で精力的に活動中。