約一カ月後に迫った閉幕に向け、ますます盛り上がる大阪・関西万博。万博の目玉のひとつだった「空飛ぶクルマ」を身近に感じてもらおうと、旅行業大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が、万博会場でデモンストレーション飛行した機体の見学と、搭乗した感覚をシミュレーターで疑似体験できるプランを売り出した。
HISは、航空機事業を手掛ける丸紅エアロスペースと7月に業務提携。丸紅エアロスペースがテーマパーク「e METRO MOBILITY TOWN」(大阪市城東区)に駐機する1人乗りタイプの空飛ぶクルマの見学と、シミュレーター体験をセットで販売し始めた。「e METRO MOBILITY TOWN」は大阪メトロの車両工場跡地に10月19日まで開設しているテーマパークで、空飛ぶクルマのほか、自動運転バス、電動レーシングカートなど未来の乗り物について遊びながら学べる。
「e METRO MOBILITY TOWN」に駐機しているアメリカ・LIFT AIRCRFT社製「HEXA」
空飛ぶクルマは、電動化や自動化といった最新の航空技術をいかし、垂直に離着陸できる特徴から未来の移動手段として注目される。万博には4グループが出展したが、「e METRO MOBILITY TOWN」ではそのうちの一つ、アメリカのLIFT AIRCRFT社製の「HEXA」と予備機2機を間近で見られる。
全長は約4.5メートル、高さは約2.4メートル、重さは約196キロ。18基の電気モーターでプロペラを回して飛ぶ。カーボンファイバーで軽量化された機体の足回りと胴体下部に計7個のフロートを装備していて、水上も運用できる。アメリカではすでに商用運行も始まっている。
最新のシミュレーター体験では背後の画面に体験者が見ているVRゴーグルの映像が映し出される
シミュレーターは操縦免許を持たない人が飛行前訓練に使うのと同じ最新型だ。操縦席と同じ型のシートに座り、VR(仮想現実)ゴーグルを付ける。操作するジョイスティックに連動してシートが前後左右、上下に動き、ゴーグルには大阪の景色が立体的に映し出される。高度300㍍まで上昇し、大阪城や高層ビル群を縫って飛んだり、道頓堀川や阪神高速道路に沿って進んだり。公園やビルの屋上など好きな場所に着陸することもできる。体験時間は約5分。
記者はパークがある城東区から会社がある北区の中之島フェスティバルタワーの屋上まで飛び、取材後に空飛ぶクルマで帰社してみた。電車の乗り換え、道路の信号も渋滞も無関係。実用化で時間の使い方が変わるとわくわくした。
HISでは「VR FLIGHT EXPERIENCE」と題して、シミュレーター体験のプランをオンラインで販売している(3千円、テーマパークの入場料が別途必要)。このほかに万博チケットをセットにしたプランも検討中だ。
空飛ぶクルマの疑似体験施設。大阪・関西万博の会場と地下鉄1本でつながる
丸紅エアロスペース第三営業本部の山口峻所長は「空飛ぶクルマは実用化が進んでいる。万博をチャンスに未来社会を身近に感じていただきたい」と期待を込める。HIS関西営業本部万博推進室の渡邉譲称室長は「HISは未来社会の創造を応援している。終盤を迎える大阪・関西万博ならではの楽しみ方として提案したい」と話している。
「VR FLIGHT EXPERIENCE」の紹介・予約サイト