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丸屋履物店@品川

成長を待ってくれたひいき客

旧街道沿いの北品川商店街にある丸屋。店先で、榎本準一さん(左)と、息子で6代目の英臣さん(30)
旧街道沿いの北品川商店街にある丸屋。店先で、榎本準一さん()と、息子で6代目の英臣さん(30)
旧街道沿いの北品川商店街にある丸屋。店先で、榎本準一さん(左)と、息子で6代目の英臣さん(30) 好みの台と鼻緒を選んですげてもらう。3500円から購入可

 東海道第一宿の品川宿。江戸時代と同じ道幅約7メートルの旧街道沿い、公園になっている本陣跡近くに、幕末の1865年創業の「丸屋履物店」はある。5代目の榎本準一さん(70)が子どものころは、料理屋や宿、映画館が並び宿場町のにぎわいが残っていた。

 10軒近くあった下駄屋も今は「丸屋」だけだ。店先には下駄がつるされ、中には草履、鼻緒が所狭しと並ぶ。奥には、金づちや鼻緒を通す道具を使って下駄や草履に鼻緒をつける「すげ」の作業場。

 先代の父親が急死し、19歳で店を継いだ。本当はプロのサックス奏者になりたかった。「父のようにはできやしなかったが、代々のひいき客は『お前がうまくなるまでよその下駄は履かないよ』と言ってくれた」。できるようになるまで10年かかった。

 「下駄や草履っていうのは、合ったすげ方で正しく歩けば、足が痛くならないんだよ」。この技を求めて日本各地から客が訪れる。下駄に慣れていない人には店頭で歩き方も教えている。「本当の良さを知って欲しいからね」

(文・写真 土田ゆかり)

 街の歴史とともに歩んできた老舗や職人の仕事をご紹介します。


 ◆東京都品川区北品川2の3の7(TEL03・3471・3964)。午前9時~午後7時。日曜定休。新馬場駅。

(2017年4月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)