横浜・元町商店街の一角、外国人墓地に続く市道沿いにウチキパンがある。
女性客らでにぎわう店内。飛ぶように売れているのは、山型食パンのイギリスパン「イングランド」だ。1888年の創業当時から同じ製法で作り続けている。もっちりとした生地は、ホップ種のたまものだ。初代の打木彦太郎は、外国人居留地にあったパン屋の英国人オーナーに10年間師事し「秘伝」の製法を継承した。パン作りの主流がイースト菌となった現在でも、5代目豊さん(44)が中心となり、その味を守っている。
ホップ種は、ホップの花を煮出して一定の温度で発酵させる。完成まで4日。手間ひまがかかるが「久しぶりに食べる人に懐かしんでほしいから、製法は変えちゃいけないと思う」と豊さんは話す。
豊さんは大学卒業後、港湾事業会社に就職し、機械のメンテナンスに従事した。その経験が店の古い機械の修理や部品作りに役立っている。「古いものを守りつつ、お客様を飽きさせたくない」と月に2種は新商品を生み出している。
(文・写真 西村和美)
◆横浜市中区元町1の50(TEL045・641・1161)。午前9時~午後7時。月曜(祝日の場合は火曜)休。元町・中華街駅。