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中村活字@銀座

活版で刷る凹凸の風合い

店に立つ中村明久さん。約3千字が漢和辞典と同じ順に並ぶ
店に立つ中村明久さん。約3千字が漢和辞典と同じ順に並ぶ
店に立つ中村明久さん。約3千字が漢和辞典と同じ順に並ぶ 活字を組む「植字」。行間などを調節する「込め物」や文字を合わせ、版を作る。名刺は片面印刷100枚まで8千円から

 カシャンカシャンカシャン――。小さな店の奥から活版印刷機の音が響く。

 中村活字は、鉛合金から鋳造した活字で活版印刷を手がける。職人が印刷機で刷るため、凹凸感やインクのにじみ、かすれなど、昔ながらの風合いが人気で、国内外から客が訪れる。

 中央区は印刷業が盛んで、1945年に160軒の活版印刷の工場があった。

 創業は1910(明治43)年。かつては活字だけを近隣の印刷業者に製造・販売していた。60年代には十数人の職人が働き、値段は小さいサイズの活字1本が3~5円だったという。しかし、75年ごろからオフセット印刷が主流になると、徐々に需要が減った。印刷機を導入し、一時は企業の下請けとしてチラシや伝票などを手がけたが、今は個人客を中心に名刺やショップカードを印刷している。

 手作りのぬくもり感が若者に受け、約10年前から「活版ブーム」が続く。5代目の中村明久さん(68)は「私の仕事を評価するのは、注文主から名刺を受け取った人」とほほえんだ。

(文・写真 吉田愛)


 ◆東京都中央区銀座2の13の7(問い合わせは03・3541・6563)。午前8時半~午後5時。(土)(日)(祝)定休。東銀座駅。

(2017年6月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)