創業は江戸後期。火薬の守り番として飯野藩に仕えた祖先が、打ち上げ花火の作り方を記した秘伝の書物を残した。6代目の福山一郎さん(60)は、図形や文字を描く花火「形もの」の第一人者だった父の背中を見て育った。
火薬を扱うため、花火工場は周囲に民家のない君津市内の山中にある。花火の色や光になる「星」は、薬剤を配合した直径2ミリの粘土を芯にし、水や薬剤などを加えながら釜でかき混ぜ、層状にした玉を天日干ししたもの。出来上がった「星」と、割火薬を半球の型に詰め、紙で貼り合わせて花火玉ができる。湿気を嫌うため、その年の受注分は前年の秋から制作を始め、梅雨前までに完成させる。
花火を打ち上げるのも大事な仕事。玉の大きさは2~20号の10種で、それぞれに対応した筒を使い、年間約3万発を千葉県内の花火大会などで披露する。福山さんは今の工場を従業員たちに任せ、年内に中国湖南省に設けた工場へ拠点を移す。「演出法など、海外の良さを取り入れた新しい花火に取り組みたい」
(文・写真 根津香菜子)
◆千葉県君津市外箕輪4の10の20に本社(TEL0439・55・7033)、同市郊外に工場。8月8日(火)の館山湾花火大会で約1万発を打ち上げる。