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久野陶園@笠間

自由な作風で生き残る 笠間焼

ろくろの前に座る慶子さん。ろくろはベルトを回転軸につないで回す方式で、計5台のろくろを一度に回せる
ろくろの前に座る慶子さん。ろくろはベルトを回転軸につないで回す方式で、計5台のろくろを一度に回せる
ろくろの前に座る慶子さん。ろくろはベルトを回転軸につないで回す方式で、計5台のろくろを一度に回せる 「卵割り」(1000円~)。手前から白釉(ゆう)、黒マット釉、焼成前のもの

 久野陶園は、関東を代表する伝統陶器、笠間焼発祥の窯元。江戸時代中期の1770年代、初代久野半右衛門が信楽(しがらき)焼の陶工に指導を受け窯を開いたのが始まりとされる。

 粒子が細かく粘性が高い笠間粘土を用いる笠間焼は、丈夫さが特徴で、すり鉢や瓶(かめ)などの日常雑器として重宝された。外部の陶工や自由な作風を受け入れる寛容さがあり、現在も250人前後の窯元がいる。「特徴が無いとも言われるが、何でもありなのが笠間の良いところ。生き残ってきた理由です」と14代目の伊藤慶子さん(57)は胸を張る。

 慶子さんは2人姉妹の長女。厳格な13代目の父の元、幼い頃から「後継ぎ」と言われ続けて反発した。一度は結婚して家を出たが、2002年に父親が亡くなり、継ぐ腹をくくった。最盛期には十数人の職人がいたが、今は1人で制作を続ける。「職人との生活の中で仕事を覚えた。元々物作りが好きなんです」。土が香る築100年超の工場(こうば)に残る、かつて職人が休憩時に囲んだ囲炉裏。今は陶芸教室の生徒らの憩いの場所になっている。

(文・写真 安達麻里子)


 ◆茨城県笠間市箱田1804(TEL080・5016・6966)。午前10時~午後5時。不定休(来訪時は要予約)。笠間駅。毎週(土)に陶芸教室を開催。

(2018年3月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)