東京スカイツリーが見える旧日光街道沿いに立つ木造2階建ての建物。1718(享保3)年、江戸刷毛(はけ)の専門店として初代の濱田利兵衛(りへえ)が創業したという。幕末、品川台場にあった大砲の火薬のすすを取り除くブラシを7代目が考案し、幕府から賞杯をもらったと12代目の捷利(かつとし)さん(75)は伝え聞いている。
1968(昭和43)年から始まった赤坂迎賓館の修復工事の際、カーテン専用のブラシを軟らかいヤギの毛で作って納入したこともある。
柄に開けた数百の穴の一つ一つに同じ長さ、同量の毛を入れていく「手植え」でブラシは作られる。一つの穴に入れられる毛の量が多く、繊維の間に詰まった汚れもかきだせる。毛は豚、イノシシなど天然の毛を使用。天然の毛は、湿度などで状態が変わりやすく扱いが難しいため、同じ量、長さの毛をつまむのは指先の感覚で行う。動物の毛は、静電気を防ぎ服にほこりがつきにくくなるという。「道具屋として日々の積み重ねで300年になりました」と捷利さんは笑った。
(文・写真 佐藤直子)
◆東京都中央区日本橋大伝馬町2の16(TEL03・3664・5671)。午前9時~午後5時。(土)(日)(祝)休み。小伝馬町駅。