砂場、藪と並ぶ、江戸三大そばの一つ、更科(さらしな)。堀井家によると、江戸時代の大名、保科家の江戸屋敷に出入りしていた初代が、屋敷の近くにそば屋を出したのが店のルーツ。更科の名は、信州そばの集散地、旧更級郡の更と、保科の科からとったという。
更科は、そばの実を挽(ひ)いて最初にとれる一番粉を使ったそばで、上品な見た目と繊細な味が人気を呼び、江戸城や大名家の出前も任された。しかし戦前戦後に廃業・再建を経験。1984年に、8代目堀井良造さん(81)が新たに「更科堀井」の名で店を構えた。
更科堀井では、そばの実から8%しかとれない芯の部分だけを使った更科粉を使う。純白のそばは、ほんのりと甘い。「明治時代、6代目の女将が東京・中野の製粉会社と共同で、より白いそばを追究したそうです」と、9代目の良教さん(56)。その伝統を守り、今も同じ製粉会社の粉を使う。
2018年12月、ニューヨークに店を出す予定だ。「江戸の更科が、今度はニューヨーカーが毎日食べてくれるような食に育ったら」と良教さんは話す。
(文・写真 渡辺香)
◆東京都港区元麻布3の11の4(TEL03・3403・3401)。午前11時半~午後8時半(ラストオーダー)。7月30日~8月2日と年始休み。