下町情緒が残る浅草。雷門1丁目交差点で国際通りを東から西に横断して浅草菊水通りに入り、最初の路地を右折すると「どぜう」と書かれた看板が目に飛び込んでくる。
「どぜう飯田屋」の前身は、浅草寺や寛永寺を参拝するために往来する人をあてこみ、幕末の慶応年間に開いた飯屋。1903(明治36)年、どじょう料理専門店になって営業を始めた。
材料のどじょうは、店と秋田県が協力して取り組む養殖物を中心に仕入れる。「近年は天然物が捕れない。秋田は水も土もきれいで、質の高いどじょうが育つんです」と、若旦那(5代目)の飯田唯之さん(36)は話す。
唯之さんは、店を守り、浅草の街を支えながら、栄養価の高いどじょうを全国に広めることも使命と考える。今後は秋田市内で、どじょうの下処理を飲食関係者に伝える会を予定している。「小さくてぬるぬるで、骨が硬く、下処理が難しい。身を開くには専用の包丁を使います。でも下処理が出来れば、フレンチでも中華でも、応用できる食材です」
(文・写真 笹木菜々子)
◆東京都台東区西浅草3の3の2(TEL03・3843・0881)。午前11時半~午後9時半(ラストオーダーは9時)。(水)休み。田原町駅。