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日光湯波ふじや@日光

東照宮や輪王寺にも納める

一枚板の大看板前に立つ斎藤一敬さん
一枚板の大看板前に立つ斎藤一敬さん
一枚板の大看板前に立つ斎藤一敬さん 湿度や温度で湯波を引き上げるタイミングが変わる。湿度の高い梅雨時期は表面の滑らかさが均一になりやすく、製造に適している

 精進料理の食材の一つとして「湯波(ゆば)」が古くから作られてきた日光の門前町に、ふじやはある。日光は日光東照宮や、関東の一大霊場として多くの僧が修行した日光山輪王寺(りんのうじ)などで知られ、ふじやの湯波は、東照宮などの神饌(しんせん)や、輪王寺の食材として納められてきた。「明治時代から一般食として普及した」と5代目の斎藤一敬さん(56)。

 前日から水に漬けておいた大豆を攪拌(かくはん)して豆乳にし、湯波槽で熱すると浮かび上がってくる膜が湯波だ。一般的には端を引き上げるが、日光では湯波の下中央に棒を通し引き上げ、2枚分の厚みを出すのが特徴。引き上げのタイミングを見極められるようになるには数年かかるという。

 冷やした湯波を棒状に巻き、油で揚げると、日光湯波の代表格「揚巻(あげまき)湯波」が完成する。日光では煮物の主役として親しまれてきた。調理の前に油抜きが必要。一手間かかるが「加工食品が台頭しても、子どもの頃から家庭の味を味わってきた人は代々買いに来てくれる。観光客だけでなく、地元に愛されなくては」。

(文・写真 下島智子)


 ◆栃木県日光市下鉢石町809(TEL0288・54・0097)。午前8時半~午後5時半(売り切れ次第終了)。不定休。日光駅からバス。

(2018年6月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)