ぽってりとした素朴な風合いが魅力の益子焼。最古の窯元である根古屋窯は、人里から少し離れた山のふもとにある。1852(嘉永5)年、笠間焼を学んで益子焼を創始した「陶祖」、大塚啓三郎が築いた。土瓶や土鍋などの台所用品を作り、江戸に販路を拡大。2代目の時代には伝習所を開設し、陶工を育てた。
現当主は6代目の大塚久男さん(67)。高校卒業後、愛知県の陶芸学校で学び、益子町へ帰って来た。学校では薄さを重視していたが、粘り気が少ない益子の土だと肉厚が特徴となることに最初は戸惑ったという。現在は7代目の長男とともに湯飲みや茶わん、皿などを手がけている。
益子町には約250軒の窯元が軒を連ねる。益子焼の名が全国区になったのは、1924(大正13)年に人間国宝の陶芸家・濱田庄司が同町に移住し、日用品に「用の美」を見いだす民芸運動を推進してから。美術的な価値も高まったが、「作り手としては、飾るよりは使ってもらいたいね。使ってこそ品物は生きるから」と久男さんは語る。
(文・写真 星亜里紗)
◆栃木県益子町益子864(TEL0285・72・2248)。益子駅。毎年春と秋に開催される益子陶器市に出店している。