8月上旬の猛暑日。川越の観光名所「菓子屋横丁」の一角にある飴屋、玉力製菓では、4代目久保田淳(じゅん)さん(44)と妻の友美さん(44)が黙々と作業をしていた。室温35度超。作業台の上ではガスストーブがたかれている。
「温度管理は最重要」と淳さん。数色の飴を組み合わせた枕のような塊を、ストーブの前で端から引き伸ばし、直径1センチほどの丸棒を作る。それを友美さんが数本まとめて包丁で切ると、断面に繊細な花模様が現れた。江戸の伝統技法を受け継ぐ「組飴」だ。
19歳で、父の故・一郎さんに弟子入りした淳さん。飴の煮詰め具合から組飴の技まで、何度もやけどを負いながら、すべて体で覚えた。
創業は1914年。かつては問屋にのみ商品を卸していたが、地元の観光地化に伴い、30年ほど前から周囲と同じように店頭販売を始めた。最近は経営や後継ぎ問題で製造を諦める店も少なくない。しかし、淳さんはあくまで「職人のいる店」にこだわる。「横丁は製造業で発展してきた。その伝統を守りたい」
(文・写真 渡辺香)
◆埼玉県川越市元町2の7の7(TEL049・222・1386)。午前10時~午後4時半。(月)((祝)(休)の場合は翌日)休み。本川越駅。