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西ノ内紙 紙のさと@茨城・常陸大宮

黄門様が命名した和紙

紙をすく菊池大輔さん
紙をすく菊池大輔さん
紙をすく菊池大輔さん 店内には、色紙や小物なども並ぶ。「西ノ内」のなかでは、冬季にしかすかない「未晒(みざらし)」(250円~)がおすすめ

 久慈川に沿って、のどかな田園風景が広がる奥久慈地方。積雪が少なく、やせた土地に自生する「那須楮(こうぞ)」の産地だ。皮の繊維が細かく、久慈川の清水とともに上質な和紙の材料になる。

 この地の和紙は中世から年貢として農家が作った。「西ノ内」は江戸時代に水戸光圀(みつくに)が命名し、特産品として縦一尺一寸(33センチ)、横一尺六寸(48センチ)の規格で全国に出荷された。厚手で水に強いのが特徴。当時は農家400軒以上が作っていたが、現在、和紙を制作しているのは2軒のみ。

 「西ノ内紙 紙のさと」は1972年にオープン。紙すき職人として4代目の菊池大輔さん(42)は、自ら畑で楮を育て、「西ノ内」をはじめ様々な寸法の和紙を制作する。

 明治末ごろ、美濃出身の曽祖父が西ノ内にふすまや障子紙にもなる美濃の手すきの技を導入した。漉(す)き舟に、楮の皮の繊維とトロロアオイの粘液を混ぜ、簀桁(すげた)ですく。簀桁の中で紙料液をためることで厚みと強度が増すという。「西ノ内紙の基本は残しながら、新しいことに挑戦したい」

(文・写真 石井久美子)


 ◆茨城県常陸大宮市舟生90(TEL0295・57・2252)。午前9時~午後5時半。(水)休み。中舟生駅。「すき絵体験」は要予約(1人1300円)。

(2018年9月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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