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稲荷湯@北区

映画の舞台になった銭湯

銭湯絵師・丸山清人さんが描いた西伊豆のペンキ絵を背に木桶を手にする土本公子さん
銭湯絵師・丸山清人さんが描いた西伊豆のペンキ絵を背に木桶を手にする土本公子さん
銭湯絵師・丸山清人さんが描いた西伊豆のペンキ絵を背に木桶を手にする土本公子さん 看板は「テルマエ・ロマエ」の小道具を譲り受けた

 「銭」を払い「湯」あみする公衆浴場の銭湯。現在、東京都内には約560軒ある。

 旧中山道筋にある滝野川銀座通りの路地に、高い煙突がのぞく。破風造りの三層屋根や飾り板の懸魚(げぎょ)、湯が沸いたことを示す「わ」の札など、昔ながらに営業するのは、大正初期創業の「稲荷湯」だ。

 建物は1930(昭和5)年の築。戦火を逃れ、「東京型銭湯」と呼ばれる格天井(ごうてんじょう)やペンキ絵といった特徴を色濃く残す。その風情から、映画「テルマエ・ロマエ」のロケ地にも選ばれた。

 「去年他界した母も言っていましたが、湯屋はお湯と清潔さしか売るものがないでしょ。だから、そこは手を抜けない」と、5代目の土本(つちもと)公子さん(55)。「木桶(おけ)がこだわりで、うちの高い天井に響く音がいいんですよ」と、今も一つ一つ丁寧に機械で洗う。

 浴槽を5年前に改装し、46度を超える名物「あつ湯」に加え、「ふつう」と「ぬる湯」を設けた。「お子さんから年季の入った常連さんまで、『気持ちよかった』の一言に心が温まります」と公子さん。

(文・写真 井本久美)


 ◆東京都北区滝野川6の27の14(TEL03・3916・0523)。午後2時50分~翌午前1時15分。(水)休み。板橋駅、西巣鴨駅。12歳以上460円。

(2018年10月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)