浅草寺の北側にある和菓子屋「徳太樓(ろう)」。1903(明治36)年創業。看板商品は、甘さが控えめで、中が透き通って見える薄皮の「きんつば」だ。初代の父は、徳川家と関わりが深かった群馬県の館林藩の江戸詰藩士だった。維新後に商売を始め、花柳界のお土産を作って売ろうと、息子を和菓子屋に奉公に出したのが店の始まり。
きんつばの由来は刀のつば。「新 和菓子噺(ばなし)」(藪光生(やぶみつお)著)によると、大阪で発祥した時は丸形だった。江戸に伝わってから、四角形に変わっていったという。
「材料や工程は、これ以上できないくらいシンプルです」と4代目の増田有希人(ゆきと)さん(44)。まず、小豆を砂糖、水あめと一緒に煮る。次に寒天を加えて冷やして固め、四角く切る。小麦粉と食塩だけで作る皮のタネはしゃもじですくい、薄皮になるようにすばやく餡(あん)につけて焼く。
「先代は『うちの商品はおやつなんだから、デパートには出さない』と言い張っていましたが、今はデパートでも人気です」と女将(おかみ)の真理さん(74)は話す。
(文・写真 渋谷唯子)
◆東京都台東区浅草3の36の2(TEL03・3874・4073)。午前10時~午後6時((土)(祝)は5時まで)。(日)休み(行事により営業)。浅草駅。