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塩瀬総本家@築地

「日本第一番本饅頭所」の看板守る

本店内に立つ川島英子さん。後ろの茶室「浄心庵」は茶道教室などに使われている
本店内に立つ川島英子さん。後ろの茶室「浄心庵」は茶道教室などに使われている
本店内に立つ川島英子さん。後ろの茶室「浄心庵」は茶道教室などに使われている 右から「紅白薯蕷饅頭」(2個入り972円~)と「志ほせ饅頭」(5個入り648円~)

 来年で創業から670年。室町時代に中国から来た林浄因が奈良で作って売った「饅頭(まんじゅう)」を起源とする。

 京都に拠点を移し、天皇家や足利将軍家に献上。8代将軍義政から「日本第一番本饅頭所」の看板をもらった。江戸へは徳川家康の江戸開府とともに移転した。

 塩瀬の「薯蕷(じょうよ)饅頭」はつややかで腰高。原料は小豆と大和芋が中心。そこに30年の年季がいるという職人の手技が加わる。皮に水はいっさい使わず、職人が大和芋の水分や粘り気などを感じ取り、米粉や砂糖とともに練り込んでいく。「材料を落とすな、割り守れ」。これが塩瀬の鉄則だ。

 注文販売が伝統だった塩瀬も現在は9店舗をもち、ネット販売も手がける。34代目の川島英子さん(94)が1980年にデパート出店を決断したときは、職人たちの猛反対を受けたが「たくさんの人に塩瀬を知ってもらいたい」と押し切った。

 時代を読み、合わせた商いをする。先代に教わった暖簾(のれん)をつなぐことの大切さを、英子さんはいつも心に刻んでいる。

(文・写真 白井由依子)


 ◆本店は東京都中央区明石町7の14(TEL03・6264・2550)。午前9時~午後7時。(日)(祝)休み。築地駅。他に都内5店、茨城・埼玉・千葉各1店。

(2018年11月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)