江戸時代、土浦藩が製造を奨励し、江戸中期には約20の醤油(しょうゆ)蔵があったという土浦。江戸の風俗を記録した「守貞謾稿(もりさだまんこう)」には、野田(千葉県野田市)と並び、土浦のものは質が良いと書かれている。
山肌の色合いから「紫峰(しほう)」の別称を持つ筑波山をのぞむ桜川沿いに、元禄元(1688)年創業の柴沼醤油醸造がある。元は穀物問屋で、銚子(千葉県銚子市)の醤油蔵に原料の大豆と小麦を卸していた。「どんどん注文が来たんでしょう。そんなにもうかるならばと、自ら醤油醸造を始めたようです」と17代目の柴沼和広さん(68)は話す。
今も明治、大正時代から受け継ぐ「木桶(きおけ)」67本で醸造を続けている。木桶は約2・5メートルの杉板を円状に組み合わせてできている。管理が難しいが、桶にすみ着いた菌が働き、蔵独自の味や香りの決め手になる。セラミックで濾過(ろか)した生の「貴醤油」や、かつおだしとみりんを加えた「紫峰しょうゆ」など木桶仕込みの商品をそろえる。柴沼さんは、「好みの合うファンを増やしていきたい」と話す。
(文・写真 井上優子)
◆茨城県土浦市虫掛374(TEL029・821・2400)。午前8時~午後5時。(土)(日)(祝)休み。土浦駅からバス。