再開発が進む虎ノ門地区のど真ん中。1878年創業の石田琵琶店がたたずむ。
西南戦争に従軍した初代が、兵士が弾く琵琶の音に感銘を受け、薩摩から3人の職人を連れ帰ったのが始まり。
戦記物が多く、戦時中に戦意高揚にも使われたという琵琶歌は、戦後一時衰退。多くが店を閉めたが、苦難の時期を楽器修理で乗り越え、現在も手作業で製作・修理を行う。
薩摩や筑前、楽、平家。大きさも材料も異なる琵琶全般を手がける。10年寝かせた貴重なクワや、ケヤキの木を注文者の予算に応じて用いる。
4代目の石田勝雄さん(81)は「最初に音を出すときは楽しみであり、緊張もする」と話す。胴と表板に用いる木の相性で音は大きく変わり、正確な音は糸を張って初めて分かる。細かな調整で演奏者の好みに合わせていく。
琵琶奏者でもある息子の克佳さん(51)は、古い琵琶を研究しながら、近年増える若い演奏者の注文にも柔軟に対応する。「今後はうちの琵琶が基準。責任もやりがいもあります」
(文・写真 安達麻里子)
◆東京都港区虎ノ門3の8の4(TEL03・3431・6548)。午前9時~午後5時。(日)(祝)(休)休み。虎ノ門駅。