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大高園@千葉・佐原

伊能忠敬も愛した茶舗

「曲尺(かねじゃく)の曲、十、丸」の紋の暖簾(のれん)脇に立つ大高一悌さん
「曲尺(かねじゃく)の曲、十、丸」の紋の暖簾(のれん)脇に立つ大高一悌さん
「曲尺(かねじゃく)の曲、十、丸」の紋の暖簾(のれん)脇に立つ大高一悌さん 静岡と鹿児島産を軸に全国各地の茶葉を独自にブレンド。種類は約100種

 〽お江戸見たけりゃ佐原へござれ 佐原本町江戸まさり

 香取神宮の社領で、江戸時代に利根川水運によって商人町として栄えた佐原。香取街道や小野川沿いには多くの商家が軒を連ねた。

 明和2(1765)年、街道筋に水戸屋与兵衛が「一服一銭」の看板を掲げ、たばこ商と茶商を営んだのが大高園のはじまり。明治37(1904)年施行の旧煙草専売法により、茶商一筋に。「芳しくて甘い香り、少し渋めで口に余韻を引くのが『うちの味』」と、11代目の大高一悌(かずよし)さん(55)。店の近くには、実測日本地図を作った伊能忠敬の旧宅があり、かつて酒造業などを商う伊能家にもお茶を納めていたという。荒茶を高温で火入れし、当時の味を再現した「忠敬好み」(100グラム、1080円)は人気の銘茶だ。

 茶葉の出来はその年々で異なるため、配合などを書き留めた書物はない。口伝と体得した臭覚と味覚で「大高園の味」を守る。「『日常茶飯事』の言葉通り、ペットボトルだけでなく、急須で入れたお茶も嗜(たしな)んでもらいたい」

(文・写真 井本久美)


 ◆千葉県香取市佐原イ3401(TEL0478・52・3965)。午前8時半~午後7時半。不定休。佐原駅。

(2019年2月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)