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シリーズ「Attirance」~馬場磨貴さんの花の写真たち(全8回)

薄水色の紫陽花 秘密

朝日新聞の金曜夕刊に11月から新連載<Print Shot>がスタート。本紙でも活躍する写真家たちの近作を数点ずつ紹介し、撮影の一瞬を記してもらう。最初のシリーズは馬場磨貴さんの花々の写真で、全8回の予定。シリーズのタイトルは『 Attirance 』。フランス語で「魅了される」といった意味だ。初回はアジサイの写真から。

 

薄水色の紫陽花 秘密

秘めた想い。〈しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで〉 どんなに密やかに控えめにしていても、もう手遅れのようです。私は葉にそう囁いてみます。花は「そうです、もうお手上げなのです」と風に揺れ小さく頷きました。

 

■馬場さんの<雑記>

私は日々道端で、民家の軒先で、公園で、花たちをカメラに収めています。花を撮ると言っても、それは人と同じで、一つの出会いであり自分の忘れていた感情の掘り起こしでもあります。 そして、シャッターを押したい衝動は一種の恋のようなものです。 自分の中の声に耳を澄ませます。花は撮る人の、感情の鏡ようです。花は花そのものでも美しいですが、なぜ人間が枯れた花に、地面に落ちた花弁に惹かれるのか。それは人間の側に何かあるのでしょう。 人間の情熱が花に木霊しているから、枯れかけた花や散った花弁にも心が動くのでしょう。花を見て涙が出たり、優しい気持ちになったり、それは花のありようや性質だけでなく、人間の心の領域の話のようです。 だからどの花にもその時の私の感情や記憶の断片みたいなのがしっかり染み込んでいます。

 

■アーティストプロフィール

馬場 磨貴 / Maki Umaba (うまば まき) 写真家。新聞社勤務後、文化庁在外研修生としてフランス・アルル国立写真学校に留学 。帰国後はフリーランスとして雑誌や広告で活動している。 写真集に、人間の無意識の顔に着目した、静謐なモノクロームの作品『 absence 』(蒼穹舎)。 都市や工場地帯、原発など、近代風景の中に巨大な裸の妊婦がたたずむ作品『 We are here 』(赤々舎) がある。現在は新たに女性の性と聖をテーマに制作を進めている。 文化学園大学、日本写真芸術専門学校非常勤講師。

 

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