「新しさ」を見える形に
コレクションを持たず、自由度の高い展覧会を行うアートセンターとして2007年に開館した国立新美術館。
主任研究員の宮島綾子さんは「所蔵品がないことは不安材料。特徴のない館名も弱みに感じ、『新』の意味を問う日々だった」と振り返る。
そんな館に佐藤可士和さんが提案したロゴは漢字で「新」。館名が抱えていたマイナスの印象を強みに読み替えた。略称の「NACT」がモチーフの案も考えたが「もっと最高の答えがあるはず」と行き着いたのがこの一文字だった。
ロゴのパーツは直線と曲線の組み合わせ。黒川紀章設計の建築の特徴的な曲線のカーテンウォールと、直線的な展示スペースを表現した。パーツが交わらず、全ての角が「開いている」のは、佐藤さんが考えた「開かれた新しい美術の場」というコンセプトを表している。基本色は建築で採用された「緋色と消し炭色」だが、展開色は自由。館を貫く自由な哲学は、デザインの隅々にも行き渡っている。
◆国立新美術館 東京都港区六本木7の22の2。午前10時~午後6時(入館は3030分前まで)。現在は、新型コロナウイルス感染予防のため、当面臨時休館中。問い合わせは03・5777・8600。