イラストレーター・平泉春奈さん(春奈先生)の描き下ろしイラストと一緒に、性のお悩みを解決するコーナー。第2回のテーマは「デリケートゾーンのケア」です。
街中の看板や電車内の広告、SNSなど至る所で「脱毛」や「黒ずみ」という言葉をよく目にします。それだけ、関心がある人やケアに取り組む人も増えたのではないでしょうか。脱毛を決めた理由やその後の影響、ケアの方法などアンケートを募集しました。自分の体に、一緒に向き合ってみませんか?(聞き手・田中沙織)
◇春奈先生のおはなし◇
デリーケートゾーン(女性器とその周辺)とは、その名の通りデリケートで大切に扱わなければならない場所。今回、みんなから寄せられたお悩みやアンケート結果を見て、私自身もたくさんの気づきや学びがありました。
イラストに登場する男女の会話には、みんなに伝えたいメッセージをギュギュッと凝縮しています。アンケート結果やお悩みエピソードを見ながら、一緒に考えていきましょう。
◇アンケート結果を紹介◇
事前にアンケートも募集しました。みんなはこの結果、どう思う?
※4月上旬に平泉春奈さんのインスタグラム(@hiraizumiharuna0204)のストーリーズ機能を通して実施。6397人から回答を得ました。
~脱毛について~
◇春奈先生のおはなし◇
結果を見る限り、処理している人が多いなという印象です。VIO(Vはビキニラインとも呼ばれる下腹部から足の付け根まで、Iは陰部から肛門にかけた縦ライン、Oは肛門周辺)だけではなく、脱毛自体が浸透している今、自然な流れだと思います。しかし、「なにもしていない」は決してマイノリティというわけでもない。
世代間で、かなり価値観も変わってくると思います。私の感覚では、10~20代が「脱毛世代」かな。脱毛を薦める広告が身近に増えていることもありますが、一番は周囲で取り組む人が増えたり、「パートナーも脱毛している」「じゃあ自分も」という風潮も広がり、一気にデリケートゾーンの脱毛が身近なテーマになったのだと思います。
お悩みエピソード
VIO全てを脱毛処理しました。しかし年を重ねるにつれて、「将来子どもができて子育てをするとき、教育のためにも毛があったほうがいいんじゃないか……」と思うようになりました。
◇春奈先生のおはなし◇
本当に大事なことを言ってくれました……。すごいなあ。
小さい子どもがお母さんやお父さんと一緒にお風呂に入りながら、大人の体を見て体のつくりを知るというのは、まさに性教育の一環だと思います。
脱毛している大人の体に見慣れて、デリケートゾーンに毛が生えることを知らないまま成長した場合、いざ自分に毛が生えたときに戸惑ってしまうかもしれません。
私は、小学校高学年になる次女と一緒にお風呂に入っています。次女は、私の体と自分自身の体を見比べながら、「お母さんはこうなのに、私はこう」と言ってくることもあります。そんなときは、「女の人は大人になったらね……」と、体の変化を教えやすいんです。
この方のように、将来の子育てを考えている場合は、「脱毛のことまで、子どもが理解できるようにきちんと伝える」という意識でいることが大切かもしれません。体の大切な部分には毛が生えてくること、なぜ自分には毛がないのか、ここをしっかりと教えるという責任が伴います。だからといって、「脱毛したい」「脱毛した」という今の自分の気持ちを我慢したり、後悔したりする必要はありません。
※四捨五入の関係で合計101%になりました。
◇春奈先生のおはなし◇
光脱毛はエステで行う脱毛方法(エステ脱毛)、医療レーザー脱毛は医師がいるクリニックで行う脱毛方法(医療脱毛)、ニードル脱毛は電気が流れる針を使用するようです。
ここ1、2年で、医療脱毛を行う人が増えた印象があります。エステ脱毛に比べて費用はかかるようですが、短期間で終了し効果を得やすいと聞きました。
ちなみに私は、部分的にエステ脱毛をしました。しっかり効果を実感したから、私はやって良かったなって思う。
かけられる費用や時間によっても、どれを選択するのか違ってきます。
正直、どの方法を選択したとしても、「いずれまた生えるかもよ」というくらいの気持ちで検討するのが良いと思います。VIOの毛は特に……根強い!
エステやクリニックに通う場合も、施術の痛みが辛く体に合わなくなって途中でやめたり、脱毛後もちょこっと生えてきてチクチクして肌がかゆくなったりしたという話も聞いたことがあります。
十分な説明を受けて、自分でもきちんと調べて、納得できたうえで選択することが大切です。
◇春奈先生のおはなし◇
Vの部分を処理するかどうかで悩む人もいるかもしれません。裸になったときに人目に付きやすいところだからね。たとえば、温泉や銭湯などに行った時に、どうしても見られてしまう可能性もあります。そして、脱毛後に部分的に生えてきてしまう場合もあるみたい。
いろんな可能性やリスクをふまえたうえで、処理の範囲を決めるとよいですね。
◇春奈先生のおはなし◇
個人的には、とても意外な結果だったな……。恋愛を意識した人が一番多いだろうと予想していました。正直、「みんな、本当かー?」って(笑)
私はカップルイラストを描いているので、どうしても恋愛への関心が高かったり、恋愛を意識して外見を整えたいと思う人も一定数いらっしゃるのではないかなと思うからです。
ただ、IとOを処理することで生理中の不快感や蒸れを予防できるのは事実としてあると思います。
パートナーの希望で処理をした人は、処理した結果「やってよかった」と思えるのであれば大丈夫でしょう。しかし後で後悔したとき、誰かのためにしたことというのは大きなつらさを伴うこともある。
最終的には、自分の意思で決めるようにしてね。
※四捨五入の関係で合計101%になりました。
◇春奈先生のおはなし◇
まず大前提として、「男女ともに、本人の自由!」というのが私の考えです。
今回、1206人の男性が答えてくれました。ありがとう!
整えて欲しいと答えた男性の気持ちを代弁すると、やはりパートナーとの性行為中の前戯のしやすさや、蒸れによる匂いを気にするのかもしれません。そして、42%の人が「特に希望は無い」と答えたように、男性からしたらそこまで気にしていないのかもしれません。
脱毛が身近な10~20代男性と、デリケートゾーンの脱毛がそこまで浸透していなかったであろう30代以上とでは、女性の毛に対する意識も違ってくると思います。
◇春奈先生のおはなし◇
男性の結果と比べて、「全て脱毛処理してほしい」が大きく減りましたね。女性と比べて、男性ではそこまで「全ての脱毛」自体が浸透していないこともあると思います。
そして、男性のVIO脱毛者が少数がゆえに、抵抗を感じてしまう女性も多いのかもしれません。男性も同じように脱毛をする時代だと頭ではわかっていても、「女性の自分よりも彼氏の方がツルツルだったら気まずいな……」「相手に合わせてツルツルにしないと……」と、妙な劣等感を抱く人もいるんじゃないかな。
今回のイラストでは、まさにそういう男女を描きました。会話にも注目してみてね!
<ちょっとひと休み>
田中: 毛が生え始める頃や思春期、周囲の目が気になって自分の毛の量や濃さなどがコンプレックスになる子も多いかもしれませんね……。
春奈先生: そうだよね。価値観や時代が違うとはいえ、大人の人に話を聞いてみるのもありかもね! 先人の知恵っていうのかな。
田中: お母さんとか親戚の女性とか?
春奈先生: そうそう。「私も同じ事で悩んでたわ~」とか「大人の女性になった証拠だよ。かっこいいじゃん!」って言われるだけでも、気持ちが楽になるかもね。とはいえ、一歩外に出て周囲の友達が脱毛を始めたりする姿を見て、焦ることもあるかもしれない。でもそういうときに、「お母さんは“かっこいい証拠だ”って言ってくれたな……」って少しでもよぎるだけで、冷静になれるかもしれないね!
~匂いケアについて~
◇春奈先生のおはなし◇
デリケートゾーンは、どうしても匂うものです。膣の中は基本、細菌の侵入を防ぐため酸性に保たれているそうです。だから、すこし酸っぱい匂いがしてもおかしいことではないんです。それでも気になる人は、一度自分のおりものの匂いをかいでみるのもありかもね。
加齢やホルモンバランスの乱れ、食事などの生活習慣が匂いに影響を及ぼす場合もあるそうです。匂いに違和感がある場合、性病の感染や病気の可能性もあるので、婦人科に相談する必要があります。一度、自分自身で向き合う時間を作るのも大事かな。
~黒ずみケアについて~
◇春奈先生のおはなし◇
最初に言いたいのは、「気にしすぎないで」ということ。ある程度の黒ずみは、全くおかしいことではありません。女性ホルモンが活発になると、メラニン色素が増えるそうです。
もし不安を感じるのであれば、専用のケア用品を活用したり、クリニックで相談してみると良いと思います。
実は今回、みんなから普段使っているデリケートゾーンのケア商品を教えてもらいました! 回答の多かったものを紹介します。
「コラージュフルフル泡石鹼」 持田ヘルスケア
「サマーズイブ」 ピルボックスジャパン
「ジャムウ ハーバルソープ」 ナチュラルプランツ
「イロハ インティメートウォッシュ フォームタイプ」 TENGA
「ULRUB ボディスクラブ」 チュラコス
※特定の企業や商品を推奨するものではありません。
今ではドラッグストアの生理用品売り場にいろんなケア商品が並ぶようになったものの、数年前まではそうじゃなかった。「デリケートゾーン専用」の石鹼やスクラブがなかった頃は、それこそ普通の薬用石鹼でゴシゴシ一生懸命洗っていた人もいるんじゃないかな。とってもデリケートな部分をそうやって洗うのはよくありません。
お悩みエピソード
6歳の娘がいます。どうやってデリケートゾーンの洗い方を教えていいのかわかりません。
◇春奈先生のおはなし◇
子どもにデリケートゾーンの正しい洗い方を伝えることは、とても大切。私の考えとしては、基本的にはお湯でしっかり流すだけでいいと思います。
もし石鹸を使うのであれば、普通の石鹸だと洗浄力が強すぎるので、肌が本来持っている「弱酸性バリア(皮膚膜)」や常在菌、潤いなどをキープしながら洗浄できる専用ソープで、優しく撫でるように洗うと良いかなと思います。
実は私自身、「洗い方」まで意識を向ける機会が少なかったように思います。娘たちにも避妊や性感染症の知識は伝えてきたけど、もっと自分自身の体のケアについて伝えるべきだったなと反省しました……。「デリケートゾーンのケア」も、大切な性教育ですね!
~大きさと形~
お悩みエピソード
小陰唇が大きく、左右非対称で恥ずかしく思っています。
◇春奈先生のおはなし◇
もしその恥ずかしさが、彼氏などパートナーに対する思いからきているならば……、それはたぶん、男性側はそんな気にしていないと思う。
小陰唇を改めてじっくり眺めるなんてことはないと思うし、行為中は、相手は前戯で彼女を気持ちよくさせるのに必死で、そんなことは気にならないと思います。ただこれもね、「あまりにも気になる」「どうしてもどうにかしたい」と思うのであれば、クリニックでの手術で形を変えることはできるみたいです。
正直私は、「そこまでする必要あるかな?」と思っています。でも感じ方は人それぞれ。最後に決めるのは、自分だからね。
<春奈先生から、みんなへ>
― 無理のない範囲で、自分のために、なりたい自分になったらいい ―
一番大切なのは、無理をしないこと。
しかし、人の目に付く部分だからこそ、コンプレックスに感じてしまう気持ちも痛いほどわかります。自分の心を痛めているものを少しでも解消することは、とても大切です。不安を楽にするためにも、まずは自分の体と向き合いましょう。そして、正しいケアの方法をじゅうぶんに調べること。
デリケートゾーンのケアは、お金や時間を無理してまで、風潮や恥ずかしさで焦って取り組むものではありません。きちんと計画を立てて、様々なパターンを想定しておきましょう。場合によっては、専門のクリニックに相談しましょう。
特に脱毛は、脱毛そのものが社会に浸透してきたように、これからの時代で世間の認識も変わってくるかもしれません。決して、流行に振り回されないように!
脱毛を検討する人も、「毛がいらないから脱毛する」ではなくて「毛も大事だけど、今は○○の理由で脱毛するんだ」と自分の中でしっかり考えて取り組む事が大切です。客観的な視点を持つようにしてほしいです。
時代は変わります。どんな時代になったとしても、自分のことを一番自分が好きでいられる選択ができるようになってね。
平泉春奈 イラストレーター
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次回は6月1日に公開予定です。