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第11回 否定しなくて大丈夫、親と話せなかった性の話、迷いを抱えた子どもの性教育

イラスト

 イラストレーター・平泉春奈さん(春奈先生)の描き下ろしイラストと一緒に、性のお悩みを解決するコーナー。第11回のテーマは「家庭での性教育」です。
 あなたは、家族と性の話をしたことがありますか? 体や心の変化に戸惑いを感じたとき、異性やパートナーとの関係で悩んだとき、誰に相談しましたか?
 子どもと保護者それぞれにアンケートもしました。子どもたちからは「性教育してほしかった」「親から性の話は聞きたくない」という声が。保護者からは「必要なのはわかっている」「夫婦間で理解に差がある」という家庭の事情も見えてきました。
 「春奈先生の独断性教育」の監修を担当していて小学4年の息子を持つ桝井政則(56)も一緒に、家庭での性教育について考えます。
 アンケート結果も紹介します。1月上旬に平泉春奈さんのインスタグラム(@hiraizumiharuna0204)のストーリーズ機能を通して実施。7,469人から回答を得ました。(聞き手・田中沙織)

◇春奈先生のおはなし◇

イメージ

*1月中旬、朝日新聞東京本社にて対談形式で取材を行いました。

平泉: 今でこそ娘たちに性教育を積極的に行っていますが、私自身は家庭でも学校でもほとんど性教育を受けずに育ちました。
 女の子は生理が始まるタイミングで自然と親と性の話をする人もいると思いますが、三姉妹の真ん中として育った私は「次は私の番か」と、淡々と受け入れることができました。でも、経血が布団や下着に漏れちゃったときはお母さんにも言えなかったな。こっそり自分で洗っていました。性や体について家族で話せるような雰囲気でもなかったですし、秘め事でした。

桝井: 僕たちが子どもの頃は「性教育」という言葉すら聞きませんでしたよね。家庭でも学校でも性の話題はゼロ。ひとつ覚えているのは、小学生の頃に女子児童だけが教室に残されて何か話を受けている日があって、なんのことかわからなかった僕は母親に聞いたんです。母は「女の子には生理がある」ということを教えてくれました。

平泉: 娘たちの時代になってようやく「どうやら性教育が細分化しているらしい」という感じですよね。

 

◇アンケート結果を紹介◇

 事前にアンケートも募集しました。みんなはこの結果、どう思う?
※1月上旬に平泉春奈さんのインスタグラム(@hiraizumiharuna0204)のストーリーズ機能を通して実施。7,469人から回答を得ました。

 

ー家庭における性教育の現状ー

アンケート1

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 家庭で性教育を受けた人が10%もいたことに驚きました。回答してくれた人やその保護者の年齢にもよりますが、私や桝井さん世代の人はそもそも性教育を受けていない人が多い。そんな世代が保護者になったとき「性教育を受けていないのに、どうやって教えたらいいんだ」「むしろ必要ないのでは?」と思う人がいてもおかしくありません。

桝井: 小学4年の息子には、プライベートゾーンについては伝えています。幼稚園の頃にプライベートゾーンについて紹介したプリントを配られたんです。防犯意識も身につける必要がありますよね。

平泉: 保護者のなかには「プライベートゾーン」という言葉を知らない人も多そうですよね。「“人に見せたら恥ずかしい場所”ってことでいつか自分で気づくでしょ」と思って、何も伝えない家庭もあるんじゃないかな。
 高校2年の長女と小学5年の次女で、性教育の進め方も違います。長女には既に避妊や性感染症、性的同意の話まで伝えています。次女は知的障がいがあり、人との物理的な距離感が近く人に触れたがったりするので、プライベートゾーンはまさに今、口を酸っぱくして教えています。

桝井: 男の子も性の被害者になる可能性を伝えることはもちろん、ある程度の年齢になると“妊娠させてしまう側”であることを意識させる教育も必要です。特に予期せぬ妊娠は、どうしても目を背けてしまう男性がいます。男性にも責任があること、その先の女性に起こることをしっかり想像できるように性教育を行う必要があります。

 

ー性教育の影響ー

アンケート2

【お悩み】

・性被害に遭ったとき、性の話がタブーだった親に打ち明けることができなかった。だからこそ、自分が親になったときには性をタブーなことにはしたくない。

・家庭で性教育を受けてこなかった。将来、子どもにうまく伝えられるかどうか不安。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 今の時代は、性について調べる方法がたくさんあります。家庭での性教育がなくても、自分で取捨選択できるんです。それこそ私の発信を見てもらってもいい!
 保護者は一番身近な人生の先輩です。性に関する悩みを相談できて、きちんとそれに応えられる関係性だといいですよね。性教育にかかわらず、悩みをなんでも語り合える関係性を私自身が望んでいたからこそ、あえて娘たちには積極的に接しています。

 

アンケート3

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 家庭での性教育の必要性を聞くアンケートでは「どちらでもよい」が26%という結果になりました。保護者自身が正しい知識のもと、性教育を行う必要があります。間違ったことや偏った考えを教えてはいけない以上、保護者だけに頼るのも危うい気がするんです。
 アンケートでは、保護者の皆さんに子どもの性教育における不安もたずねました。

 

・いつどのタイミングで、何を教えたらいいのかわからない。絵本はあるらしいが……。

・正しい知識よりも、教える親個人の知識や考えが間違ったり偏ったりしていないか不安。

・性行為についておしえるとき、噛み砕いて伝えられる言葉がわからない。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 今は「どちらでもよい」と答えている人も、保護者の立場になると考えが変わるかもしれません。「家でも性教育をしましょう!」という社会の流れもあります。子どもの立場としてどうだったか、親になったときにどう思うのか、悩みますよね。

桝井: 我々が生きてきた時代よりも、性に関する情報が多岐にわたりすぎていて、なかには間違った情報もあります。保護者が全ての情報を精査できない以上、リスクを減らすための教育が必要ですよね。

平泉: アンケートでは子どもの立場からも、家庭における性教育への疑問や要望など様々な声が届きました。

~疑問や要望~

・性について親に相談するためには、大きな勇気が必要。万が一のときに一人でも解決できるように最低限のことを教えてほしい
・母に性について聞いてごまかされたとき「あ、聞いてはいけないことなんだ」と感じた。
・避妊しなさいとよく言われたが、それと同時に「性行為=いけないこと」という認識がついた
・ナプキンやシェイバーなど、思春期特有の道具を買ってもらえなかった。
・何も教えてもらっていないのに「妊娠だけはするな」と言われて、「ん?」と疑問に感じてしまう。

~抵抗感~

・性教育であっても、親から性的な話をされるのを嫌がる子どももいると思う。教育に繫げるには難しいのではないか。
・正直、親から性教育を受けるのは気が引ける。
異性の親から性教育を受けるのは、嫌悪感がある

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 保護者の一言や反応がきっかけで「性行為=いけないこと」というイメージに繫がってしまうのは、悲しいことですよね。性に対するイメージの、マイナス一歩ではないでしょうか。

 急に子どもにたずねられて戸惑う気持ちもわかります。私も今回のテーマに向き合うにあたって、性教育について紹介している書籍も参考にしてみました。答える準備ができていないときは「準備しておくね」と伝えたうえで話の機会を設けることが大切だそうです。子どもには、きちんと向き合う姿勢をみせてあげてくださいね。

 セックスは愛し合う行為だからこそ、素敵なことだということも伝えてほしいと願っています。私個人としては、性行為自体を否定する言い方は絶対にしたくないんです。避妊や性感染症対策などをしっかり教えたうえで、幸せな行為であると言うことを伝えたい。言い方ひとつで、子どもの受け取り方も与える影響も変わるのではないでしょうか。

 

<春奈先生おすすめの書籍を紹介!>

「おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方」
著者:フクチマミ、村瀬幸浩
出版社:KADOKAWA

 フォロワーさんからおすすめの本を教えてもらって、実際に読んでみました。
 もう、目から鱗! お悩みにも多かった「子どもに急に性の話を聞かれたら?」という悩みに対する解説も紹介されていました。私は娘しかいないうえに、幼少期の性教育に関しては分からないことだらけ。
 学びが深く読みやすかったので、ぜひ皆さんもチェックしてみてね!

KADOKAWA公式サイト
https://www.kadokawa.co.jp/product/321911000487/
 

 

ー 一問一答! 家庭で性教育を行うことの難しさ ー

アンケート4

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 家庭の事情にもよりますが、母親と父親が両方身近にいる場合は、思春期以降の性教育は子どもの性別に配慮する必要もあるかもしれません。幼い頃はどちらでも大丈夫かもしれませんが、次第に内容もディープになってきますよね。思春期は子どもの心も繊細ですし、異性の親から教わることに抵抗感を感じる子も多いのではないでしょうか。
 我が家は、夫がいてもリビングで性の話をできるような雰囲気にしていますが、夫が会話に加わることはありません。しかし万が一のためにも、夫にも知っておいてもらうようにしています。

【お悩み】

・異性の親から性教育を受けるのは、嫌悪感がある。

・父子家庭で、父親からしか性教育を受けられなかった。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 父子家庭で育ったという女性から「何も教えてもらえなくてつらかった」という悩みも届きました。私のフォロワーやこの記事を読んでくれている人は圧倒的に女性が多いと思うので難しいかもしれませんが、ぜひ男性や男親の皆さんにも読んでいただきたいです。
 性の話が難しくても、本を家に置いたり渡してあげたりするのはどうでしょうか? まったく触れずに成長するのは危険です。突然の生理で困ってしまうこともあります。

 一人親家庭などどうしても家庭での性教育が難しい状況が考えられるからこそ、教育現場でもきちんと性教育を行ってほしい。
  保護者の皆さんも学校に相談してみるという方法も、解決策のひとつです。学校に「父子家庭で娘への性教育が難しいから、保健室の先生に声をかけてもらえないか」など、誰かに助けを求めることも“保護者ができる性教育”かもしれません。

 

・性教育の必要性はわかるが、伝え方を一歩間違えると性的虐待になりそうで不安。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: これは不安になりますよね。事実を淡々とわかりやすい言葉で伝えること、要はまじめに取り組む姿勢が大切です。
 保護者の個人的な性癖を伝えたり、わざと生々しく話をしたり、子どもをからかうような言い方をするのではなく、第三者的立場で話すのはどうでしょうか。

 

アンケート5

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 桝井さんは、家庭で性教育のタイミングや内容を話したりしますか?

桝井: まだ話せていませんが、まさにこれから必要になってくると思います。しかし僕が単身赴任中ということもあり、パートナーに任せることが多くなってしまうのかもしれません。子ども自身の成熟具合にもよりますよね。

 

・小中高それぞれ、ボーダーラインがあると助かる。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 成熟具合も成長のスピードも、子どもによって全く異なります。まずは子どものサインに気づき、見極めることが大切ではないでしょうか。「赤ちゃんはどうやって産まれるの?」「どうして赤ちゃんができるの?」「好きな子ができたんだ!」など、子どもが何かを伝えてくれたタイミングも良いかもしれませんね。

 ちなみに私は長女が小学3、4年くらいの頃に、私の作品を見て自然と恋愛や性に興味を持ち始めた時期が大きなきっかけだったな。長い時間をかけて娘との間に信頼関係をつくり、娘の方からもいろんな事を聞いてくれるようになりました。
 小学5年くらいの頃になると、私が好きで買いそろえていた少しエッチな少女漫画を「少し“そういうシーン”があるよ! わからないことがあれば聞いてもいいからね」と言って、あえて勧めてみました。
 ある日、2歳年上の友人から聞いたらしく「ラブホテル行くと子どもができるの?」とたずねてきたんです。これはチャンスだ!とばかりに、二人でお風呂につかりながら性の話をしましたね。「性行為は子どもをつくるためだけにあるんじゃないんだよ。だから『避妊』って言葉があるんだよ」ということも伝えました。

 

・小1の娘が人前でも自慰行為をしてしまい、対処方法がわからない。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: なかには、自分がどのような行為をしているのか理解が難しい子もいます。頭から行為自体を否定するのではなく「自分だけの空間でね」と声をかけるのもひとつです。

 

・夫が小1の娘と一緒に風呂に入ることがある。家族でも異性だという認識を持ってほしい。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 子どもといつまで一緒にお風呂に入るのか、悩む人もいると思います。本人が望んでいたとしても、ある程度の年齢で保護者の方から一線を引く必要があるのではないでしょうか。なかには、体の発育が早い子どももいるからです。
 「そろそろパパとのお風呂は卒業しようね」とやさしく声をかけて、夫側にも納得してもらうことが大切です。
 銭湯や温泉に年齢制限があるように、家でも、性別が異なるということで配慮する必要性を教えてもいいのかもしれませんね。

 

・家庭での性教育は、逆に興味を持ってしまう可能性もあるのではないか。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 「性教育を行うことで、逆に性に興味を持ってしまう」という不安は、よく見聞きします。個人的には「性教育を受けたからといって特別興味を示すのではなく、自然とある程度の年齢で興味を持つよね」という意見です。
 インターネットや友人などから間違った知識をインプットされる前に、まじめな話として大人が伝えることの方が重要なのではないでしょうか。

 

・性行為について具体的な話をしたとき「両親もしたんだな」と想像されるのが嫌だ。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 親同士の仲が良くなかったりすると嫌悪感や疑問を感じる子どももいるかもしれませんし、親子で性の話に一切触れてこなかった場合も、子どもの性に対する抵抗感が生まれやすいかもしれません。
 そんな子はどうか、将来家族を持ったとき「子どもから同じように思われるかも」と不安を抱えないでほしい。そう思われない親子関係を、あなたが作っていけばいいんです。自分で自分の未来を創れるんだから。

 セックスなど生々しい内容は、ある程度物事を俯瞰してとらえられるようになってから伝える必要があります。急がなくて良いから、知識として家庭でも伝えられるといいですね。

 

・我が子に性教育できていたとしても、他の子たちが性教育を受けていない場合に、子どもが変な目で見られてしまわないか不安。

・性教育をしたくない家庭もあるなか、子どもが周囲に家庭での性教育の内容を話してしまわないか不安。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: この気持ちわかるな。私も娘には「この話は2人だけの秘密だよ。外で言わないでね」と添えていました。わざわざ外で言いふらすような内容でもないですからね。万が一人に伝えるときにも「嫌な気持ちになる人もいるから、相手の様子を見て伝えるように」と言いました。

 

ー家庭での性教育、誰が行う?ー

アンケート6
※四捨五入の関係で合計101%になりました。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 家庭の状況にもよりますが、母親の方が子どもと過ごす時間が長いのかもしれません。

桝井: 保護者間のコミュニティーを見ても、母親が教育の場に参加することの方が多い印象です。僕も息子が幼稚園に通っていた頃に思ったのですが「保護者の皆さん来てください」と呼びかけられると圧倒的に女性が多かった。そんななかでいきなり「僕も保護者のLINEグループに入れてください!」とは言いにくかったです。

平泉: 女の子は生理もありますし、きっかけもつかみやすいですよね。男の子も夢精がありますが、気づいていてもあえて何も言わない保護者や、自分でこっそり布団や服を洗っている子も多いのではないでしょうか。
 母親、父親、両方が性教育を行っている理由も聞いてみました。

母親が実施している
~女性特有の理由~

・同じ女性として、娘には私からのほうが伝えやすい。
・PMSを知らない夫は生理について説明できないと思う。

~夫との考えの違い~
・夫は「性教育は自然と学ぶもの」という考えで、性教育にはノータッチ。
・性教育の必要性を感じているのが私だけだから。
・夫の知識は「AVを参考にしたもの」だから。
・「男同士の方が話しやすいだろう」と夫に息子への性教育をお願いしたが、恥ずかしがってダメだった。
・夫は子どもからの性の質問に、ふざけて答えたり話をそらしたりする。

~家庭の事情や母親自身をきっかけに~
・母子家庭で息子がいる。息子への性教育は難しいが、自分が教えるしかない。
・母子家庭だが、祖父母も巻き込んで実践している。
・私自身が生理や妊娠のタイミングで、都度伝えている。
・私の生理を病気と勘違いした当時4歳の息子に説明をしたのがきっかけ。

父親が実施している
・父子家庭だから。

母親と父親の両方で実施
・女性目線、男性目線の両方から大切なことを伝えている。
・プライベートゾーンに関する絵本を、両親ともに読み聞かせしている。
・“体”については理解しやすい同性の親が、異性の気づきも必要な“性交”については異性の親も、夫婦で協力して2歳頃から性教育を実施。
・男女両方の気持ちを理解できるようになってほしかったから。
・生理だった私があとからお風呂に入ったとき、夫が娘に生理について教えてくれた。
・かしこまらずに自然に伝えられるように、特に決めていない。

◇春奈先生のおはなし◇

平泉: 夫婦での理解の差が目立ちました。男性の方が性教育に触れる機会が少ないのかもしれません。AVや恋愛経験のなかで自然と学び、大きな問題もなく過ごしてくると、どうしても性教育の必要性を実感しにくいですよね。

 無理やり、夫に性教育に参加してもらう必要はないかもしれません。まずは、性教育の必要性を理解している人や、「性教育をしたい」と思っている人が実施する。その姿を自然にパートナーにも見せる。まさに我が家がそんな感じです!
 過度な期待をせずに、男性にはハードルが高いことを理解したうえで、性教育に対して身構えないでいいように協力し合うことが大切です。

桝井: 家庭にもよりますが、単身赴任中で子どもと離れて暮らす僕と比べて、パートナーの方が子どものサインに気づきやすいと思うんです。たしかに「子どもがこんなことを聞き始めたよ」「関心を持ってるかも」とシェアしてもらえるのはありがたいですね。

 

ー「学校」に望むことー

平泉: 避妊や性感染症については、中学校の段階で軽く教えるらしいです。セックスや避妊の意味も含めて、もっときちんと教えてほしいと願っています。
 体が変化していく小学校高学年になると、ある程度の物事を理解できる子が増えてきますし、セックスの意味を知っている子も出てきます。学校だからこそ、淡々と事実を伝えることができるのではないでしょうか。

桝井: 学校によって性教育の進め方や積極性も違います。厚生労働省が学習指導要綱に基づいて性教育の内容を記しているように、公立と私立によっても変わってきますし、外部講師を招いて積極的に授業を行う学校もあります。

平泉: 子どもがその先20年、30年と生きていくなかで、根幹となる性への向き合い方はとても重要です。学校と保護者、協力して形作っていくことが大切ですよね。

 

ー“話せる”親子を目指すためにー

桝井: 平泉家は、なんでも話してもらえる親子関係を作るために意識していることはありますか?

平泉: 弱みを見せるようにしています。母親の私が完璧で先生っぽくなってしまうと、逆に壁ができてしまうと思うんです。親も一人の人間で、弱いところもあって、なんなら娘を頼って対等な存在だと思ってもらう。すると娘は「お母さんはこういうところは頼りになるけど、こういうときは頼りないよね」なんていって、自分の話をしてくれるんです。老いては子に従えって言うのかな、今を生きている娘の意志を尊重することも大切ですよね。

桝井: 僕は離れて暮らしている分、息子が息抜きできる存在でいたいと思って接しています。時には「知らないの?」なんて馬鹿にされながら、最近はやりの曲やダンスなど息子の興味があることを教えてもらったりして。そうやって、自分をさらけ出して話してくれる関係になれるといいなと願っています。

平泉: なにかあったら真っ先に相談できる親子関係だといいですよね。ごまかさずにまっすぐ答えながら、長い時間をかけてでも信頼関係を築いていく。性教育って長期戦だからね。
 大人になっても親子は続くんです。子を産んだ瞬間から性教育は始まるし、子どもと向き合っていく必要がある。明るく前向きに、楽しく性教育ができるといいですね。

 

<春奈先生から、みんなへ>

ー あなたの性教育を否定しないで ー

 性教育を満足に受けられなかったあなたへ。
 私がこうやって性の情報を発信できているように、いくらでも知識を身につけられる時代になっています。過去の自分の環境を否定して“マイナスな人生”だなんて思わなくて大丈夫。正しい情報を取捨選択していってくださいね。

 これから親になる皆さん、いま子育て中の皆さんへ。
 ぜひ今回お伝えしたことを頭の片隅において、いざというときの参考にしてみてください。
 性教育の方法に迷っている皆さんも、落ち込む必要はありません。今からでも家に性教育に関する本を置いてみたり、子どもがいるときにリビングで性教育の番組を見てみたり、できることはたくさんあります。
 たとえ難しくても、子どもは自分の力で正しい性の知識を身につけていけると、信じてあげてください。「春奈先生の独断性教育」のリンクを送るのもおすすめですよ!

 正解はひとつではありません。前向きに、性教育に向き合っていきましょうね。

 


 

桝井政則

 桝井政則(ますい・まさのり)

 1968年生まれ、大阪市出身。
 小学4年の息子の父親で、東京で単身赴任中。
 朝日新聞メディアプロダクション企画編集部長、「春奈先生の独断性教育」監修担当。1992年朝日新聞社入社。ジェンダーや性、演劇、伝統芸能などをテーマに取材。

 


 

平泉春奈

 平泉春奈

 イラストレーター
 愛と美と官能をテーマに、カップルイラストや短編小説を創作。3冊目の著書「私たちは愛なんてものに」(KADOKAWA)を発売。

 


 

次回は3月1日に公開予定です。

(2025年2月1日。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。)