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第12回 “あなたは、あなた” コンプレックスの先にある幸せを

イラスト

 イラストレーター・平泉春奈さん(春奈先生)の描き下ろしイラストと一緒に、性のお悩みを解決するコーナー。第12回のテーマは「性のコンプレックス」です。
 ここ数年、「自己肯定感が低い」「ルッキズム」という言葉をよく聞くようになりました。体や恋愛経験、性体験において、自分自身を受け入れることが難しい人もいるのではないでしょうか? アンケートでは、パートナーや家族の何げない一言で苦しみ続けている声も届きました。幼くして受けた性暴力による傷も寄せられました。一つひとつ、丁寧に向き合っていきます。
 今回で最終回の「春奈先生の独断性教育」。いったん幕を下ろしますが、またどこかで再開できることを願い、春奈先生がエールを送ります。(聞き手・田中沙織)

◇春奈先生のおはなし◇

 「自己肯定感」や「ルッキズム」、ここ数年で注目されるようになった言葉だよね。特に若い世代の皆さんは、SNSの影響もあって気にしている人も多いかもしれません。
 SNSを通して世界が広がっていくのは良いことですが、よく知りもしない他人と自分を比べる必要はありません。簡単にいろんな情報が入ってくる時代だからこそ、自分で自分の意識を変えられるようになってほしい。自身を苦しめるものからは上手に目をそらしたり、有益なものに目を向けたりできるように、コントロールできるといいですね。

 今回のテーマは「性のコンプレックス」。私のもとには、恋愛経験に関する悩みが多く届きます。これから紹介しますが、恋愛経験がないことや処女であることで苦しみ続けている声が特に多くて「だから自分には価値がない」と思ってしまっている人もいます。
 アンケート結果や寄せられたお悩みを見ながら、一緒に「性のコンプレックス」との向き合い方を考えていきましょう。

 

ーコンプレックスの有無ー

◇アンケート結果を紹介◇

 事前にアンケートも募集しました。みんなはこの結果、どう思う?
※2月上旬に平泉春奈さんのインスタグラム(@hiraizumiharuna0204)のストーリーズ機能を通して実施。5,737人から回答を得ました。

アンケート1

◇春奈先生のおはなし◇

 コンプレックスの有無は、置かれた状況によって変わってくるかもしれません。仕事や家庭など、何かで満たされている人は悩みを気にしにくくなれるかもしれないね。
 私は仕事柄、20代の若くて可愛らしい「インフルエンサー」やきらびやかな世界の人と出会うことが多いのですが、そのおかげで美意識も高まった気がします。しかし、逆にそれが自分を苦しめたときもあったかもしれません。老いることへの恐怖?っていうのかな。同じくらいの年齢の頃を思い出して、後悔がよぎることもあります。「私なんて20代を子育てで終えちゃったな」なんてね。そんな気持ちもある一方、彼女たちは私から何かを学びたくて声をかけてくれるんです。
 多くの人が、満たされて一生懸命なときもあれば、コンプレックスもある。81%という結果が物語っています。
 ここからは、みんなから寄せられたコンプレックスについてジャンルごとに紹介します。

 

アンケート2

ー身体的特徴ー

①胸

【お悩みエピソード】
・胸が小さいこと。
・元彼がセックスのときにあからさまに胸の愛撫を避けていて「そのサイズは触りたいと思わない。豊胸してくれたらね」と言われた。その一言がショックすぎて、今の彼とのセックスの時どうしても上を脱ぐのを拒んでしまう。

◇春奈先生のおはなし◇

 胸のサイズをコンプレックスに感じる人は多い印象です。男性の意見や、アダルトビデオの影響もあり「胸が小さいとダメ」といった刷り込みがあるかもしれません。
 女性側もわかっているかもしれませんが、大切なのはそこじゃない。胸の大きさを重視している男性とは「ご縁がなかったんだな」と思って、ふるいにかけていいのではないでしょうか。

 胸の大きさをいかしたファッションを楽しみたい女性は、膨らみを作れたりデザインに工夫を凝らしたりした下着や水着はたくさんあります。

 パートナーからの一言がコンプレックスに繫がっているという声もたくさん届きました。パートナーだから何でも許されると思っているのか、何も考えずに発言してしまう人が多いのではないでしょうか。パートナーは「所有物」ではありません。そんな相手の言葉は気にしないでくださいね。幸せなことで上書きしていきましょう。

 なかには、夫婦関係など簡単に別れられない人もいます。傷ついていること、本気で嫌だという気持ちをきちんと伝えてください。それでもダメなときは、関係性を考える必要があります。

 

【お悩みエピソード】
・陥没乳頭でつらい。

◇春奈先生のおはなし◇

 過去にアンケートを行ったときも、陥没乳首の悩みがたくさん届きました。セックスの際に悩んでいる女性も多かったのですが、男性側の意見は「特に気にしていない」「むしろ愛おしい」という答えばかり。恥じる必要は全くありません。

 授乳のときに苦労する可能性はありますが、保護器を活用して授乳できたという経験談も届きました。難しい場合は、無理せずにミルクに変えるのもひとつ。「絶対に母乳で育てなきゃいけない」という時代ではありません。

 

【お悩みエピソード】
・胸が大きく、男女で一緒に行う持久走の授業で男子からの視線を感じてしまう。

◇春奈先生のおはなし◇

 小ささに悩む人もいれば、大きくて悩む人もいます。
 コンプレックスに感じることが、誰かにとっては真逆だということ。頭の片隅に置いておくことで、もしかするとコンプレックスを克服できる方法の一つかもしれませんね。

 胸が大きくて悩む人のなかには、痴漢などの犯罪に巻き込まれたり異性からの視線を感じたりするなど、トラウマを抱えてしまう人がいます。
 思春期は周囲の目が気になってしまう気持ちもわかります。さらしや胸を押さえる下着もありますが、無理に苦しい思いをしてまで身につけないでほしい。もし嫌な目で見てくる人がいたら「この人はそういう目でしか人を見られないのね」と思考を変えてみてください。本当に信頼できる人を見極めてくださいね。

 「大きくてうらやましいね」という言葉は、簡単に言ってはいけません。逆もしかり。人それぞれ受け止め方は違います。発言する前に、相手がどう感じるのかを考えられるようになってくださいね。

 

②デリケートゾーン、体毛

【お悩みエピソード】
・ムダ毛があることと、体毛が濃いこと。
・デリケートゾーンの黒ずみ、ヒダの大きさ。

◇春奈先生のおはなし◇

 体毛の悩みは、今はいろんな方法で解決できます。脱毛もそのひとつ。無理のない範囲で、脱毛サロンやクリニックを検討してみてくださいね。
 しかし体毛は、大事だから生えてくるんです。「生えてくるものだからしょうがない。だけど嫌だから対処しよう」という気持ちで、どうか悩みすぎないようにしてね。過去にデリケートゾーンをテーマに紹介しました。参考にしてみてくださいね。

第2回 あなたのデリケートゾーンは、誰かのためでもない、自分のための選択を
https://www.asahi-mullion.com/column/article/seikyouiku/6044
 

 

【お悩みエピソード】
・幼稚園の頃から親に「なんでこの子は、こんなに毛が濃いのかな?」「どこから来た遺伝子?」と言われてきた。軽い気持ちで言っていたんだろうけど、必要以上にムダ毛がコンプレックスに感じるように。悩ませるくらいなら、脱毛代くらい出してほしかった。

◇春奈先生のおはなし◇

 子を持つ親として、私自身も娘たちへの発言を振り返ることができました。親からの言葉って、強く心に残りますよね。毎日のように一緒にすごしていると、言わなくていいことまで言ってしまうこともあります。だからこそ、言葉選びは大切です。

 なによりも親が子どもにできる一番大切なことは「ありのままを愛する」ということ。じゅうぶんに信頼関係が築けていて愛情を伝えられていれば、何げない一言の受け止め方も変わってくることもあります。

 

③肌

【お悩みエピソード】
・背中のニキビや肌荒れ、色素沈着が気になる。

◇春奈先生のおはなし◇

 ニキビの他にも、アトピーに悩む人も多い印象です。適切な治療を受けるようにしてくださいね。食生活の見直しで改善される話も聞きます。肌は、普段の食事やストレスでも影響を受けやすいからね。
 肌の治療は長期戦になりがちなので、治療によるストレスや「なんで私ばかり」とつらい気持ちもわかります。前向きになれることを願っています。

 

④体形

【お悩みエピソード】
・太っていなかったのに「デブ」と言われ続けて体重が増えた、痩せられなくなった。
・肉割れがある。
・家族から体の特徴をいじりのような感じで言われてから、ずっとコンプレックス。

◇春奈先生のおはなし◇

 人からかけられる言葉って、本当に大切ですよね。
 体形のコンプレックス、よくわかります。ファッションが楽しめなかったり、見られ方も気にしちゃうよね。
 体形が変わったからこその魅力を見つけてみるのも、楽になる方法の一つかもしれません。「お尻が大きい=セクシーでかっこいい」「肉割れ=努力の結晶」。短所も長所になることがあります。自分で自分をマインドコントロールすることが、コンプレックス克服への第一歩ではないでしょうか。

 

【お悩みエピソード】
・産後に垂れてしまった胸と、太ってしまった体が気になる。

◇春奈先生のおはなし◇

 産後の体の変化は気になりますよね。パートナーの存在で受け入れられる人も多いのではないでしょうか。
 私も気にしたことがあるんですが、夫が「頑張った証拠じゃん!」「そのおかげで可愛い子どもができたんだから!」と言ってくれて、かなり救われたな。「勲章だ」っていう声も届きましたよ。

 

ー恋愛ー

【お悩みエピソード】
・25歳くらいから「彼女がいない歴=年齢=童貞」だということを気にし始めて、もうすぐアラフォーに。
・「年齢=恋愛も性体験も未経験」。みんなが普通にできることができない自分が惨めになる。

◇春奈先生のおはなし◇

 恋愛で自己肯定感が左右されてしまう人は多いのではないでしょうか。しかし、恋愛であなたの価値がすべて決まるわけではありません。恋愛はタイミングと運。できないからダメなんてことは絶対にない。
 壮大な話に聞こえるかもしれないけれど、誰かが恋愛をしているときに、他の誰かは必死に子育てしたり仕事や別の事に夢中になったり世界を飛び回る。そうやってタイミングがずれるからこそ、世界はまわっているんです。焦らずに俯瞰して物事をとらえられるようになってね。

 

【お悩みエピソード】
・パートナーに合わせて疲れてしまうため、恋愛が長続きしない。
・8年間付き合っていた元彼に一度も抱かれなかった。自己肯定感がとても下がった。

◇春奈先生のおはなし◇

 どちらも、とてもつらい悩みですね。
 ありのままで居られない恋愛というのは、いつか上手くいかなくなります。自信がなくて相手に合わせてしまっている人もいるのではないでしょうか。パートナーと対等であるためにも、自信を持てる何かを作れるといいですね。

 良い恋愛をしていると、その都度肯定感も上がっていくはずです。コンプレックスになってしまうというのは本末転倒。恋愛以外にも目を向けてみるのも大切です。

 8年間もパートナーと行為がないというのは「話し合ったうえでセックスをしなかった」ということなのかな? そのときは受け入れられたとはいえ、自尊心が下がって傷つく気持ちもわかります。他者に性的魅力を感じないアセクシュアルの人もいますからね。

 

ー性体験ー

【お悩みエピソード】
・前戯中に彼氏から「陰部の臭いが強い」と言われてからとても気にするように。いろんな対応をしても臭いがするようで、性行為が楽しめずコンプレックスになった。

◇春奈先生のおはなし◇

 このお悩みは、大好きな相手にだけ知られる場所だからこそコンプレックスになりやすいですよね。しかも直接言われてしまうと、現実を突きつけられるようでつらいもの。デリケートゾーンの回でも紹介しましたが、専用ソープを使用したり保湿したり、清潔にする方法はたくさんあります。においが病気のサインだということもあるので、時には、レディースクリニックに相談することも必要です。
 自分が悪いと思わずに、気にしすぎないようにしてくださいね。臭いに敏感な人もいますし、感じ方はひとそれぞれです。

 

【お悩みエピソード】
・彼女と別れるときに「あなたとの行為は気持ち良くなかったし、ずっと苦痛だった」と言われてから性行為がトラウマに。できるだけ痛くないように、少しでも気持ち良くなってほしいと思って、本やYouTubeで色々調べていたつもりだったから、とてもショックだった。

◇春奈先生のおはなし◇

 男性からのお悩みも届きました。彼女も良かれと思って言ったのかもしれませんが、別れ際にこんな言い方をされるのは、彼としてはつらいですよね。
 セックスは相性も大切です。お互いが意識していることと望んでいることが違うこともある。悲観的にならずに「相性が悪かったんだろう」という気持ちで前に進んでいけることを願っています。

 

【お悩みエピソード】
・元彼にフェラチオを強要されてからセックスが怖く、恋愛も怖くなった。

◇春奈先生のおはなし◇

 この経験は「愛されない人間なんだ」というコンプレックスに繫がってしまうかもしれません。強要されることは、自尊心を傷つける行為です。
 あなたは愛される人です。きっと心から大切に想ってくれる人に出会えるはず! 過去にオーラルセックスをテーマに紹介しました。参考にしてみてくださいね。

第9回 “オーラル”に縛られないで、大切なのは2人がどうしたいか
https://www.asahi-mullion.com/column/article/seikyouiku/6292
 

 

ー性暴力ー

【お悩みエピソード】
・10代の頃にレイプ被害に合い、二十歳を超えた今も、相手のことも加害者の人数もわからないし覚えていません。とても怖くて痛くて苦しかったことは覚えています。そのたった1度の行為で妊娠し、結果的に自然流産してしまいましたが、その子のことは今でも夢に出てきます。彼氏ができても、男性と2人きりになるのは抵抗があり、彼との性行為が怖いと感じて別れることもありました。性暴力がどれだけ怖いものなのか、どれほど酷いことなのかが世間に伝わりますように。

◇春奈先生のおはなし◇

 本当に胸が痛くなるようなお話しです。伝えてくれてありがとう。
 まず、あなたは何一つ悪くありません。こんな思いをしたからこそ、あなたは誰よりも幸せにならないといけないんです。長い時間が必要だと思います。心から寄り添ってくれる人や信頼できる人を頼って、その人を大切にしてくださいね。少しずつ心のケアをしながら、ちょっとずつ前向きになれることを願っています。
  私の作品を観てくれているのかな? 癒やしや救いになっているといいな。苦しい思いを抱えながらもみんなにメッセージを届けてくれて、ありがとう。

 

ーコンプレックスが「ない」、その理由はー

アンケート3

◇春奈先生のおはなし◇

 アンケートでは19%の人が「いまはコンプレックスがない」と答えました。根っからのポジティブ思考で人と自分を比べない人もいます。なかには、パートナーの存在や努力で克服した人もいました。克服エピソードをジャンルごとに紹介します。

 

ー身体的特徴ー

①胸

【克服エピソード】
・胸が小さいことがコンプレックスだったが、彼氏に「大きさは関係ない」と言われ少し気持ちが楽に。
・バストアップの専門店に通っていて、彼氏も性の悩みを解決するために一緒に克服中。

◇春奈先生のおはなし◇

 パートナーが受け止めてくれることで、コンプレックスの気持ちが軽くなる人もいますよね。パートナーと一緒に性の悩みを解決するのは、とっても素敵なことです。良い関係性ですね。誰よりも理解してくれますし、仲間が居ることは心強いですよね。男性も女性も、何かしらのコンプレックスを抱えるものです。

 

【克服エピソード】
・小学生の頃から胸に悩みがあったが、骨格(骨格ストレート)が原因だとわかった。

◇春奈先生のおはなし◇

 最近は、骨格診断やカラー診断で自分の特徴を知ることができます。名称が付くことで、安心できたり納得できたりすることもあります。ポジティブに受け止められるきっかっけになるといいですね。

 

【克服エピソード】
・真性陥没乳頭がコンプレックスで、はじめてのセックスのときに「なんか違うね」と言われたことがずっと引っかかり、見た目も気になり胸を隠してしまうように。将来授乳をすることを想定した手術ができる病院を探して、彼氏もいないタイミングで手術をしました。それからは自分の胸に自信を持てるようになりました。「乳頭が反応してくれるようになった」。パートナーからの愛撫の気持ちよさを知ることができました。

◇春奈先生のおはなし◇

 小陰唇やワキガなどもよく聞きますが、ときには手術でコンプレックスを解消する方法もあります。ただし、病院選びは慎重に行うようにしてくださいね。手術後のトラブルが問題になるように、一歩間違えると、逆にコンプレックスが悪化してしまう恐れもあります。

 

②デリケートゾーン、体毛

【克服エピソード】
・デリケートゾーンの臭いが気になっていたけれど、専用ソープを使用するようになって解決できた。
・お尻と脇の毛がコンプレックスだったけれど、全身脱毛をした。

◇春奈先生のおはなし◇

 「しっかりケアしてるぞ」という気持ちが、自信に繫がることもありますよね。時代によって考え方も流行も変わっていきます。そのことを忘れないでくださいね。

 

③肌、体形

【克服エピソード】
・アトピーによる色素沈着と体形がコンプレックスだったけれど、ピラティスに通い体形を改善したり、彼氏がアトピーを気にせずに「可愛い」と言ってくれて自然と気にならなくなった。

◇春奈先生のおはなし◇

 パートナーがありのままのあなたを可愛いと言ってくれるのは、とても嬉しいですよね。

 

ー性体験ー

【克服エピソード】
・セックスのあとにパートナーと反省会「これはよかった」「もっとこうしてくれるといいな」をするようになった。

◇春奈先生のおはなし◇

 モヤモヤしていたことを解消するためにも、感想戦はおすすめです。しかし、言葉選びには気をつけて! 「○○は嫌だった」「気持ち良くない」「下手」といった相手を傷つけるようなことは言わないようにしましょうね。デリケートな話だからこそ、男女ともに気遣い合うことが大切です。

 

【克服エピソード】
・今のパートナーが全てを肯定して愛してくれるから、自分も自分を認めてあげることができた。
・コンプレックスをパートナーに打ち明けたとき、すべて受け止めてくれた。

◇春奈先生のおはなし◇

 すべてをさらけ出すパートナーに自分を受け止めてもらえるというのは、大きな救いですよね。誰よりも、自分のことをわかってくれる。
  私も、夫が受け入れてくれるからこそ性について堂々と発信できています。改めて、夫には感謝の気持ちでいっぱいです。
 受け入れてくれて、私も受け入れる。お互い様ですね。

 

<春奈先生から、みんなへ>

ー あなたは、あなた。 コンプレックスの先にある幸せをつかんで ー

 コンプレックスを抱くことは、悪いことではありません。ときには落ち込むことも、自然なことです。私も悩んだり落ち込んだりしながら、どこかで折り合いをつけて受け入れて生きてきました。努力するためのモチベーションに変換することも大切です。
 「悩みを抱えた人の気持ちがわかる優しい人間になれたな」というのも、受け入れる方法のひとつです。

 「コンプレックス=自分を作り上げるアイデンティティ」です。

 どうしても苦しいときは、紙に書き出してみてください。一度、コンプレックスと自分自身を引き離してみると、新たに見えてくるものがあるのではないでしょうか。自分で自分をカウンセリングしてみてね。

 大切なのは、自分が満たされて幸せであることです。幸せは、自分の心がつくっていくもの。幸福のハードルをあげて「自分なんて」と呪いをかけないでくださいね。
 「あなたは、あなた」です。誰かと比べて感じてしまう劣等感は、どこかで断ち切る必要があります。

 コンプレックスを抱えて、克服できればいいし、仮に克服できなくても折り合いをつけながら幸せになること。
 生きていくって、そういうことなのかもしれません。

*** 春奈先生から、みんなへ 卒業ver. ***

 第12回をもって「春奈先生の独断性教育」はいったん終了となります。1年間、フォロワーの皆さんからたくさんの声を寄せていただき、密度の濃い連載を続けてきました。過去のブログとは違った視点で、性について掘り下げることができました。
 担当者の田中さんとは、いつも長時間の取材をとおして赤裸々に性の話を繰り広げるなかで絆が深まっていきました。そのくらい「性の話」って、人と人の距離を縮めてくれるものです。
 親子、夫婦、カップル、友人。信頼できる人と悩みを共有することで、もしかすると、あなたが抱えた悩みが半分軽くなるかもしれません。もし誰にも相談できないときは、気軽にDMを送ってくださいね!

 性の悩みは、生きている限りあり続けます。大切なのは、悩んだときにどう対処できるか。あなたにとっての「芯」を持ってくださいね。困ったときは、この連載を覗きにきてください。

 最後に、1年間自由気ままに独断で駆け抜けることができて、本当に幸せでした。記事の公開前にチェックを入れて、ときに的確なアドバイスをしてくれた朝日新聞メディアプロダクション企画編集部長の桝井さん、最高の記事にしてくれた聞き手で書き手の田中さん、ありがとうございました。

 またいつか、この場所に戻ってこられると嬉しいです。

 


 

平泉春奈

 平泉春奈

 イラストレーター
 愛と美と官能をテーマに、カップルイラストや短編小説を創作。3冊目の著書「私たちは愛なんてものに」(KADOKAWA)を発売。

 


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(2025年3月1日。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。)