ポーッ。3両の客車を引くC12型蒸気機関車(SL)が汽笛を長く大きくとどろかせると、車内やホームにいた家族連れやカップルから歓声があがった。
「SLもおか号」が煙をはきながらゆっくりと下館方面へ走り出す。左には、SLをかたどった真岡駅舎と展示施設の「SLキューロク館」が並び、まるで3台のSLが並走しているかのようだ。
真岡線に1994年、24年ぶりにSLが戻った。真岡市内の鉄道ファンらの要望で、市は周辺の4町と費用を出し合い福島県内にあったC12型を購入し、復元した。その後、市はC11型を新潟県内から購入。運行用のSLは2台になった。
「SLが走るまち」をさらにアピールすべく、市は2013年にキューロク館を完成させた。土日祝日の1日3回、展示用の9600型を圧縮空気で動かして屋外に顔見せするデモンストレーションをする。今秋には静岡市からD51型も譲り受け、展示用のSLも2台になる。
展示用9600型を動かすのは、初代館長の湯浅陽三さん(76)と現館長の岩見和男さん(67)だ。湯浅さんは、旧国鉄時代にSLの機関士だった経験を買われ、92年にJR東日本から第三セクターの真岡鉄道に移った。SL復活に向け、国やJRとの交渉、運行設備の整備、乗務員の養成を担ってきた。「日本の産業を牽引(けんいん)したSLの文化を大事にして、地元の活性化にもつなげたいね」
いま、真岡鉄道には湯浅さんらの指導を受けて国家資格の甲種蒸気機関車運転免許を持つ職員が4人いる。最年少の篠崎伸二さん(34)は「石炭を燃やすので夏は暑くて大変。でも、機関士と機関助士、車掌のチームで運行する楽しさがあります」。湯浅さんの思いは、次世代に受け継がれている。
文 中村和歌菜/撮影 谷本結利
真岡線は下館駅(茨城県筑西市)と茂木駅(栃木県茂木町)を結ぶ41.9キロ。 SLもおか号は年末年始を除く(土)(日)(祝)に1日1往復し、真岡駅を含む9駅に停車。乗車券と別途整理券(500円、小学生250円)が必要。 真岡市の名物といえば、木綿とイチゴ。真岡駅から徒歩約15分の真岡木綿会館(TEL0285・83・2560)では、生産工程の見学、機織りと染色の体験(要予約、有料)ができる。 国道294号沿いの道の駅にのみや(TEL0285・73・1110)は、2駅隣の久下田駅から車で約8分。イチゴをはじめとした農産物やデザートなどを販売する。
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SLキューロク館(TEL0285・83・9600)で販売する益子焼のマグカップ(2500円)は、9600型がモチーフ。SLもおか号で使われた石炭の灰を釉薬(ゆうやく)にブレンドしている。午前10時~午後6時。(火)((祝)の場合は翌日)休み。 |