本土最南端の終着駅に今年4月、駅舎が完成した。ホームしかなかった駅に旅客が憩える建物が建ったのは実に7年ぶりのこと。広さ52平方メートル。こぢんまりとした駅舎の建設費は約1500万円。県からの補助金500万円をのぞき、市民や市出身者からの寄付金でまかなった。
もともとあった駅舎が取り壊されたのは2006年4月。所有していた鹿児島交通が大型スーパー出店のために駅の用地を売却した。駅は約100メートル南のJR敷地内に移動。無人駅になった。
市内で旅館を経営する積山(つみやま)ユミ子さん(64)は5年前の4月8日の朝を思い出す。旅館は毎年、戦艦大和の慰霊祭で枕崎を訪れる遺族たちを迎えてきた。慰霊祭の翌日、たまには海を見ながら列車で帰ってみたいという遺族たちを送って、久しぶりに訪れた駅は草が伸び放題でゴミだらけ。ベンチもないので、列車が到着するまでバスの中で待ってもらった。
「駅をなんとかせんとね」。09年、積山さんら4人は「駅を想(おも)う会」を立ち上げ、ゴミ拾いや草刈りを始めた。募金をたよりに「ようこそ枕崎へ」の看板を設置し、花壇や季節ごとの飾り付けで駅前を彩った。12年には市や商工会議所などが駅舎建設期成会を結成、駅舎復活の動きが本格化する。だが、1日130人しか利用者がない駅に駅舎を新設するのは難しい。「休憩室」を造るという名目で許可をJRから取り付けた。
相撲字で書かれた駅舎の看板は、5月に定年を迎えた大相撲の立行司、第36代木村庄之助(本名・山崎敏広)さん(65)によるものだ。15歳で枕崎から上京した。「親兄弟や同級生が総出でホームから見送ってくれたんです。この駅から巣立ったという思いが強いんですよ」。そういって目を細めた。
文 東芙美/撮影 上田頴人
JR指宿枕崎線は鹿児島中央駅(鹿児島市)と枕崎駅(枕崎市)を結ぶ87.8キロ。桜島や錦江湾、開聞岳と沿線には見どころが多い。 戦艦大和を旗艦とする第二艦隊の慰霊碑が立つ平和祈念展望台は、枕崎駅から車で10分。東シナ海を一望でき、映画「男たちの大和/YAMATO」のロケ地にもなった。遺族から贈られる灯籠(とうろう)は年々増え続けている。「わだつみ会」のガイドは要予約。問い合わせは枕崎市観光協会(0993・72・1111)。 水成川駅から徒歩20分の番所鼻自然公園(TEL36・1111)は、開聞岳を望み、伊能忠敬が「天下の絶景」と称した景勝地だ。
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鹿児島県商店街グルメNo.1決定戦「Show-1グルメグランプリ」で今年、2連覇を達成した枕崎鰹船人(かつおふなど)めしSPは、漁師めしをアレンジ。カツオの切り身とかつお節がのった飯に、カツオでとっただしをかけて食べる。だいとく(TEL72・0357)ほか枕崎市内の10店で。 |