降り立つとふわりと潮の香りがした。ホームのすぐ下に波が迫る。「日本海にいちばん近い」駅だ。「やっぱりここが日本一の絶景」。駅を見下ろす高台で地酒屋を営む片山静江さん(64)は笑う。独り占めするのはもったいないと、2階をギャラリーとして開放した。訪れた人に観光ガイドをすることもあるそうだ。
1日あたり数えるほどの乗降客しかいない無人駅だが、景色の美しさに魅了された人たちが全国から訪れる。そんな旅人を、待合室に置かれた1冊のノートが待つ。気ままに旅情をつづる自由帳だ。
最初にノートを置いたのは稲田賢(たかし)さん(43)。1993年に初めて訪れ海と空の青さや駅の静かさにひかれた。98年にノートを置いてからは当時住んでいた埼玉県本庄市から月に一度は通い、ノートを交換したり、古いノートの書き込みをワープロで清書して駅に戻したりした。
近くには「恋人岬」があり、93年には駅が恋愛ドラマ「高校教師」のロケにも使われた。「心の駅になりました」「またきっと2人で来ます」。稲田さんのノートにも連名の書き込みが目立つ。
約1年で7冊になったところで稲田さんは福岡県に引っ越し、ノートの管理を続けることができなくなった。ところがいつの間にか、待合室には新しいノートが置かれるようになった。今年5月にも1冊。「次に来る時もあるといいな」。稲田さんのノートに記された誰かの思いを誰かがつないでいる。
文 相田香織/撮影 馬田広亘
JR信越線の直江津駅(新潟県上越市)~柏崎駅(同県柏崎市)間は日本海沿いを走る。なかでも柏崎市内の米山駅から青海川駅を経て柏崎駅に至る区間は福浦八景と呼ばれる美しい海岸線が続く。鯨波・青海川海岸は日本の渚(なぎさ)百選にも選ばれた。恋愛成就スポット恋人岬へは青海川駅から徒歩30分。 柏崎駅から徒歩20分のみなとまち海浜公園では、7月26日(金)午後7時半から海の大花火大会を開催。越後三大花火に数えられ、海上で打ち上げられる花火は迫力満点。問い合わせはぎおん柏崎まつり協賛会(22・0726)。
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柏崎鯛(たい)茶漬けは今年の「全国ご当地どんぶり選手権」でグランプリ受賞。鯛めしに鯛の香り揚げと鯛のなめろうをのせた「三味一鯛」。駅から徒歩20分の「海鮮自慢の店 福浦」(TEL0257・23・6293)のグランプリ仕様の鯛茶漬け=写真=は1050円。 |