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田んぼアート駅(青森県、弘南鉄道弘南線)

稲の「地上絵」 大パノラマ

田んぼからシュワッチ! 岩木山から夏雲がわき出す
地図

 東北地方の梅雨がようやく明けた今月初旬。「弘前で駅開業のポスターを見て名前にひかれて来ました」と中年の夫婦が電車から降りてきた。

 見渡す限りの水田。「田んぼ以外何もない」と村の人たちが笑う青森県田舎館村で、約30年前に弥生時代の水田跡が発見された。はるか昔から続く米作り。それを生かして村おこしができないか。役場職員が考えたのが田んぼアートだ。

 「1993年に始めた当初は岩木山の絵と村の名前だけ。使う稲も3種類と単純でした」と村企画観光課の福地香織さん。毎年5月になると職員総出で田植えに励み、その後も細かく手を入れて絵を仕上げる。今では9種類の稲を使って微妙な色合いを表現できるようになった。「今年はとくに出来がいいですよ」と福地さんは満足そうだ。

 人口約8200人の村に10万人を超える見物客が訪れるようになり、昨年から第2会場を新設した。すると「地元の方から、近くに駅をつくって欲しいという投書が役場にあったんです」と弘南鉄道総務部の桜庭博巳さん(48)。さっそく協議を開始。設置費約3100万円を村が負担して、今年7月27日に開業した。

 田んぼアートの期間中のみ営業する臨時駅だ。当初は1600人と見積もっていた利用客は、開業からわずか9日間で1000人を超えた。「予想をはるかに超える盛況です」。桜庭さんの顔がほころんだ。

 文 永井美帆撮影 上田頴人

 

 弘南鉄道弘南線は弘前駅(青森県弘前市)と黒石駅(同黒石市)を結ぶ16.8キロ。

 田んぼアートの会場は2カ所あり、駅は第2会場に隣接。村役場向かいの第1会場には無料シャトルワゴンが運行している。両会場とも展望施設は10月14日(月・祝)まで。観覧料300円(両会場共通)。問い合わせは村企画観光課(0172・58・2111)。

 国指定名勝、盛美園(TEL57・2020)は2駅隣の津軽尾上駅から徒歩約10分。1911(明治44)年に完成。約1.2ヘクタールの庭園の一角に、1階が和風、2階が洋風の「盛美館」が立つ。400円。

 田んぼアートのきっかけになった垂柳遺跡では東北地方で初めて弥生時代の水田跡が発見された=写真は発掘時。村埋蔵文化財センター(TEL0172・43・8555)は駅から徒歩2分。発掘された水田の上を歩ける。300円、田んぼアート期間中100円。(月)休み。

水田跡

  

(2013年8月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)