「学問の神様」菅原道真をまつる太宰府天満宮の玄関口として、1902年に開業。没後千年を記念した菅公一千年大祭に合わせて敷かれた馬車鉄道が始まりだった。動力は馬から蒸気へと変わり、一千二十五年大祭の年となる27年に電化。一千五十年大祭の52年には駅舎を改築した。「天神様」と歩んできた駅だ。
時を経て、街は福岡市内で働く人のベッドタウンとなった。八つの大学と短大を抱える学園都市でもある。「朝は市内へ出勤する方が乗り、駅前からバスに乗る学生さんが降りていきます」と駅の責任者を務める溝部益明さん(51)。8年前に九州国立博物館ができてからは外国人観光客も一段と増えたそうだ。
だが、参道の景色は変わらない。道真の死に際し、老女が餅に梅の枝を添えてひつぎに手向けたのが由来とされる「梅ケ枝餅」。今も昔も参道には梅ケ枝餅を売る店が立ち並ぶ。その数およそ20軒。大正時代に創業された「かさの家(や)」の3代目、不老(ふろう)安正さん(69)は「合格祈願に来た方が大事そうに食べていかれます」とほほえむ。
大学入試センター試験の2日目、受験を済ませたばかりという福岡県久留米市の女子高生に境内で会った。「祖父母の代から、受験の時には天神様にお願いするのが決まり」と、真剣な表情で絵馬に大学の名前を書き込む。びっしりと掛けられた絵馬。「最近は韓国語や中国語で書かれたものも多いですね」と禰宜(ねぎ)の味酒(みさけ)安則さん(59)。
2日後、神木の「飛梅」が二輪の白い花を咲かせた。春は近い。
文 永井美帆/撮影 比田勝大直
西鉄太宰府線は西鉄二日市駅(福岡県筑紫野市)と太宰府駅(太宰府市)を結ぶ2.4キロ。 太宰府天満宮(TEL092・922・8225)には、左遷された菅原道真を慕って都から一夜で飛んできたと伝えられる「飛梅」をはじめ、約200種、6000本の梅が植えられている。例年3月上旬までが見頃。 太宰府駅から徒歩10分の九州国立博物館(TEL050・5542・8600)では3月17日(日)まで「ボストン美術館 日本美術の至宝」展を開催中。10万点を超える日本美術の収蔵品の中から、尾形光琳の「松島図屏風(びょうぶ)」など46点が展示されている。
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参道の中ほどにあるかさの家(TEL092・922・1010)の梅ケ枝餅(105円)は、北海道産の小豆を使ったあんを使用。店内で梅ケ枝餅と抹茶のセット(577円)=写真=が味わえるほか、地方発送も受け付けている。
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