最高価格のデラックススイートは2人1室110万円。九州を周遊する豪華寝台列車「ななつ星」が10月15日、走り出す。
県内で唯一の停車駅。金曜と日曜の朝6時ごろ、2番線に到着する。停車は3、4時間。運行開始に合わせて改装されたホームに真新しい建物が立つ。乗客が朝食をとるレストラン「火星」だ。
「阿蘇の魅力を世界に発信できる大きな仕事。夢のようです」と、経営する中山謙吾さん(59)。車内に朝食を運ぶ案もあったが、「雄大な景色を楽しんでもらおう」とレストランが建てられた。
鼻をくすぐる新築の香り。外輪山を望むガラス張りのデザインは「ななつ星」の車両も手がけた水戸岡鋭治さんによるものだ。食材はすべて阿蘇産。「キャベツは波野から。トマト、あか牛は産山(うぶやま)村のものです」。阿蘇市内で外食店や旅館を経営する手腕を生かした。
昨年7月12日未明、「これまで経験したことのないような大雨」が阿蘇を襲った。豊肥線でもトンネルが崩落。一部区間が不通となった。全線復旧したのはほんの2カ月前だ。「ななつ星」の運行開始は災害から立ち直った象徴でもある。
駅舎を出ると、阿蘇五岳がゆったりと裾野を広げていた。中岳から立ちのぼる白い噴煙が雲に混じる。熊本市の病院に行くという高齢の女性に「ななつ星がとまるんですね」と声をかけると、「やっぱり世界の阿蘇たいね」。誇らしげな答えが返ってきた。
文 曽根牧子/撮影 上田頴人
JR豊肥線は、熊本駅(熊本市)と大分駅(大分市)を結ぶ148キロ。周囲約130キロの阿蘇カルデラを東西に横切る。 秋は雲海が発生しやすい。早朝、阿蘇市内の27の宿泊施設を出発する涅槃(ねはん)像雲海ツアーは11月30日(土)まで。2100円。問い合わせは阿蘇インフォメーションセンター(0967・32・1960)。 宮地駅には8月、豊肥本線災害復旧資料館がオープンした。2012年の九州北部豪雨で変形したレールなどを展示する。阿蘇神社は同駅から徒歩20分。門前町では30カ所以上の湧き水巡りを楽しめる。 |
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阿蘇駅から徒歩2分のASO BASE BACKPACKERS(TEL0967・34・0408)は日本人と韓国人の夫婦が営む、外国人旅行客にも人気の宿だ。ミックスドミトリー(男女相部屋)2800円~。女性専用部屋もある。 |