「復活するなんて、半信半疑だったのよ。走っとる電車をはよう見たいわ」。旧河戸駅の隣に暮らす大下満子さん(72)が、うれしそうに線路を見つめた。
広島市街地から太田川沿いに延びる路線は10年前、利用者減少に歯止めがかからず、可部駅から先の非電化区間約46キロが廃止された。しかし、復活を求めて住民と自治体が地道な活動を展開。今年2月、可部駅から約1・6キロを電化、延伸することが決まった。廃線後にJRの路線が復活するのは全国初だという。
可部駅の隣、旧河戸駅と線路の一部は廃線後、広島市に無償で譲渡された。「線路も駅もなくなったら望みも消えてしまいますから」と市都市交通部の大村昭彦課長(52)。ただ、復活区間には中間駅と終点駅が新設されるため、旧河戸駅はなくなってしまう。
秋晴れの午後、廃線跡を歩いた。家々の間をすり抜けるように続く。「草もごみもないでしょう。みんなで大切にしてきたんです」。住民の立場で運動を引っ張ってきたJR可部線利用促進同盟会の大畠正彦会長(73)が誇らしげに話してくれた。同会は市と一体となって町づくりを進めてきた。「鉄道と一緒に町がさびれてはいけんでしょう」。宅地開発が進んだことも運動を後押しした。
復活は2015年春の予定だ。〈ゆめかなう 祝JR可部線電化延伸〉――。線路と並走する県道に横断幕が晴れがましく掲げられていた。
文 永井美帆/撮影 渡辺瑞男
JR可部線は横川駅(広島市西区)と可部駅(安佐北区)を結ぶ14キロ。可部駅~三段峡駅(広島県安芸太田町)間は2003年に廃止された。 可部駅から徒歩約10分の可笑屋(かわらや、TEL082・847・5508)は、築150年の建物を改築したコミュニティーサロン。土産物販売や喫茶のスペースがある。午前10時~午後6時。第2・4(日)(月)休み。 三段峡は同駅からバスで約1時間半。国の特別名勝で、大小の滝や淵を楽しみながら約13キロにわたって歩ける。問い合わせは安芸太田町観光協会(0826・28・1800)。 |
|
旧河戸駅のホームに残されている待合室は、終点駅の建設予定地がある長井地区の自治会が活用を検討している。同自治会は「ふたたびプロジェクト」と名付けて、全国初の廃線復活とされる可部駅以西の地区を盛り上げようと、さまざまな活動を繰り広げている。その一環として、待合室を土産物販売所に再利用する構想だ。 |