「前は駅もこんなにきれいじゃないし人もいなかったんですよ」。2、3年ぶりに東京から来たという25歳の女性2人組が、顔を見合わせて笑った。
駅の背後、標高353・7メートルの山頂にある国史跡の竹田城跡。石垣が雲海に浮かぶ写真がインターネットなどで広まり「天空の城」として人気に。5年前は年間2万人だった観光客が、今年は10月末で30万人に達する勢いだという。
玄関口である駅には今春から大阪発の特急列車が臨時停車するようになった。併設の観光案内所も城跡への行き方を案内したり、登山用の杖を貸し出したりと大忙し。観光ガイドも務める朝来(あさご)市観光交流課の上山哲生さん(62)は「廃城から413年、自然のまま朽ち果てているのが竹田城跡の魅力」と話し、押し寄せる観光客を迎えつつ、どう遺構を保全していくかを課題に挙げる。
今月10日、市の公募ボランティア「竹田城天空武将隊」のお披露目があった。甲冑(かっちゅう)姿で駅や城跡周辺に登場、観光案内や記念撮影に応じる。夫婦で応募した寺西義樹さん(50)と聡美さん(47)は4月に兵庫県姫路市から駅の近くに引っ越してきたばかり。「これも何かの縁。私たち根っからのいちびり(目立ちたがり)なんです」と聡美さん。義樹さんは竹田城跡を守る決意をこう宣言した。
「石垣にいたずらしたりするマナー違反を見つけたら『成敗いたす』。めざすは暴れん坊将軍です」
文 伊東絵美/撮影 馬田広亘
JR播但線は姫路駅(兵庫県姫路市)~和田山駅(朝来市)間の65.7キロ。特急が竹田駅に臨時停車するのは12月1日まで。 竹田駅の裏手は家老屋敷跡に4軒の寺が並ぶ寺町通り。城下町の風情が楽しめる。 生野(いくの)銀山(TEL079・679・2010)は生野駅からバスと徒歩で約20分。807年発見といわれ、1973年まで操業した日本有数の鉱山。坑道見学は900円。 寺前駅から車で約30分の砥峰(とのみね)高原には約90ヘクタールのススキの原が広がる。大河ドラマ「平清盛」も撮影された。問い合わせは神河町観光協会(0790・34・1001)。 |
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竹田城跡は南北400メートル、東西100メートルの山城遺構。16世紀後半に築いた石垣が残る(写真は吉田利栄さん撮影)。雲海は晩秋の晴れた早朝に出やすい。駅裏の登山道は工事中で、う回路を使い約50分。高校生以上300円。問い合わせは朝来市竹田城課(079・672・6141)。 |