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阿左美(あざみ)駅(群馬県、東武桐生線)

ホームに縄文人の「落とし物」

阿左美(あざみ)駅
鉄道会社のはからいでホーム上にそのまま保存されている住居跡。許可を得て建物内で写した
阿左美(あざみ)駅 地図

 電車を降りて3歩。駅のホームに、縄文時代の住居跡「阿左美遺跡」はある。

 「この辺りは住宅街です。今も3500年前も」。案内してくれたみどり市文化財課の萩谷千明さん(47)が教えてくれた。駅から半径150メートルの範囲内に多くの縄文人が暮らしていたそうだ。

 構内で遺跡が見つかったのは1954年のこと。ホームの拡張工事中に土器の破片が出てきたのがきっかけだった。群馬大史学研究室が緊急に調査し、ほぼ完全な形で住居跡が発見された。

 桐生市文化財調査委員の大里仁一さん(81)も発掘に参加した1人だ。終戦直後の中学生のころ、地元で考古学を研究していた故・相沢忠洋にくっついて遺跡をまわった。日本初の旧石器時代の遺跡、赤城山のふもとの岩宿遺跡を発見した在野の学者だ。岩宿の発掘に1日だけ参加したことが、大里さんの原体験になる。以来、発掘調査と聞くと飛びついた。「線路の下も掘りたかった」と、阿左美遺跡の発掘を振り返って笑う。

 「これ縄文土器だな」。ホームを歩いていた萩谷さんが茶色い破片を拾った。「縄を転がした跡が見えるでしょ」と手渡されたかけら。時の重みに気が遠くなる。今も100個は掘り出せるはずというが、持ち帰りは厳禁だ。「3500年前に住んでいた人の落とし物ですから」

 昨夏には、駅の近くで戦国時代の城跡も見つかった。生の歴史が、ごろごろ転がっている。

 文 塩見圭撮影 篠塚ようこ

 

沿線ぶらり

 東武桐生線は太田駅(群馬県太田市)と赤城駅(みどり市)を結ぶ20.3キロ。

 桐生市は織物の町。国登録有形文化財の建物が多く残る。織物工場跡地を利用した人気のパン屋ベーカリーカフェレンガは、新桐生駅から車で約10分。

 相老駅はわたらせ渓谷鉄道の乗換駅。1、2月の(土)(日)(祝)、各駅のイルミネーションを楽しむイベント列車も(要予約)。問い合わせはわたらせ渓谷鉄道営業企画課(0277・73・2110)。

 赤城駅から車で約15分の小平の里では、2月中旬までロウバイが見頃。

 

 興味津々
カトリック夙川教会
 

 阿左美遺跡は、直径約4メートルの竪穴住居跡が2棟分発掘されている。煮炊きに使われたとされる土器などの出土品=写真=は、駅から車で約10分の岩宿遺跡に隣接する岩宿博物館(TEL0277・76・1701)に保管されている。

(2014年1月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)