150分の1のミニチュア列車が2×3メートルの大地を走る。「さんてつジオラマカフェ@釜石駅」は駅の待合室だ。床には見慣れた黄色の案内ブロック。券売機で買う本物の切符が食券の代わりだ。週末には全国から約100人が訪れる。
東日本大震災の翌年、2012年3月にオープンした。復旧のめどが立たない中で少しでも駅を活用しようと三陸鉄道の筆頭株主、岩手県が地元の企業に営業を委託。駅事務室は調理場に変わった。
ジオラマは震災前の南北リアス線の主要駅を再現した。製作したのは同県奥州市で模型店を営む及川徹也さん(69)と妻のイサヨさん(67)。「見る人が昔を思い出してつらい思いをしないか」。ためらいはあったが、かつての景色を懐かしんでもらいたいと、がれきの残る街を取材し、写真などの資料を集めて4カ月かけて完成させた。津波で流された北リアス線の島越(しまのこし)駅が復元され、駅前を人々が行き交う。満開の桜の下には、花見を楽しむ大勢の人たち。「明るい気持ちになって欲しいですから」と徹也さん。
作業着の男性がジオラマに見入っていた。市内に住む近江修さん(31)。ボランティア団体の代表を務めている。「今日は仮設住宅から復興住宅への引っ越しを手伝いました。これからこういう仕事が増えてくるでしょうね」
南リアス線は4月5日に全線で運転を再開する。その後、カフェをどうするかは未定だ。だが、「開店以来、無我夢中でやってきた」という店長の山崎美央さん(23)も、3年ぶりに走る本物の列車を楽しみにしている。
文 中村さやか/撮影 上田頴人
三陸鉄道南リアス線は、釜石駅(岩手県釜石市)と盛駅(大船渡市)を結ぶ36.6キロ。4月5日に不通の釜石~吉浜駅間が運転を再開する予定。北リアス線の不通区間も6日に運転を再開し、三鉄全線が復旧する。 釜石市は近代製鉄発祥の地。平田(へいた)駅から車で5分、鉄の歴史館(TEL0193・24・2211)では、キーホルダーを作る鋳造体験ができる(要予約、100円、別途入館料)。盛駅から徒歩2分、ザ・バーガーハーツ(TEL090・2953・0997)の恋し浜帆立バーガー(650円)は地元産のホタテを丸ごとコロッケにしてバンズで挟んだ。高さは15センチにもなる。
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さんてつジオラマカフェ@釜石駅(TEL0193・55・5520)の人気メニューは、さんジオセット(900円)=写真。地元メーカーのしょうゆをかけて食べる三陸産のめかぶ丼、イカのミンチ入りカレー、タコライスを一緒に楽しめる。午前11時~午後6時、(木)休み。 |