「お父さんは昔の、僕は平成の仮面ライダーが大好きで、遊びに来ました」。東京から母親と一緒に来たという奈木野拓真君(11)が声を弾ませた。駅から徒歩12分。旧北上川の中州に立つ石ノ森萬画館にファンが次々と吸い込まれていく。昨年の入館者は約20万人。東日本大震災以前の入館記録を塗り替えた。
宮城県登米市出身の漫画家、故・石ノ森章太郎さんにちなみ、石巻市が市民の要望を受けて2001年に設立した。萬画館へ続く「いしのまきマンガロード」の起点となる駅にもサイボーグ009らが立ち、ファンを迎える。
震災の発生から5日間、津波から逃れてきた人ら約40人が萬画館で救助を待った。「石ノ森先生のマンガの本を手に取り、見たり読んだりして心がほぐされたという人たちもいます」と、萬画館を運営する「街づくりまんぼう」の本郷由華さん(38)。津波で1階が水没したり、一部倒壊したりする被害を受けた萬画館は12年11月、再オープンした。その日だけで約4千人が詰めかけたという。
石巻市の震災による死者・行方不明者は4千人近くにのぼる(2月末、関連死を含む)。駅は大きな被害をまぬかれたが、仙石線は今も全線の約4分の1が不通。全線復旧は来年の見込みだ。駅助役の橘雅之さん(45)は「震災前に走っていた漫画のラッピング電車が再び仙石線を走れば、復興の起爆剤になってくれるはずです」と話した。
文 石井広子/撮影 上田頴人
JR仙石線はあおば通駅(仙台市)と石巻駅(宮城県石巻市)を結ぶ50.2キロメートル。現在も高城町~陸前小野駅間11.7キロメートルが不通。石巻駅で小牛田駅(美里町)と女川駅(女川町)を結ぶ石巻線に接続する。仙石線を走っていたラッピング電車マンガッタンライナーは昨年、新しい車両で石巻線に復活した。 石巻市で盛んなカキ養殖。生産量は震災前の約4割まで回復したという。石巻線渡波(わたのは)駅から車で2分のかき小屋渡波(TEL0225・24・5640)では殻付きカキを炭火で焼いて味わえる。8個1000円。炭300円。
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石巻駅から徒歩10分の石巻まちなか復興マルシェ(TEL0225・92・6603)は被災した商店が協力して設立した仮設市場=写真、右奥は石ノ森萬画館。地場産品を扱う共同の販売所など5店舗がある。フードコートも併設。 |