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里見駅(千葉県、小湊鉄道)

過疎の駅に通学のにぎわい

里見駅
菜種梅雨にぬれた構内踏切を渡る児童たち。安全のために遮断機が設置された
里見駅 地図

 房総半島の菜の花は、今年も咲いた。だが、駅の光景は昨年までとは違った。3月まで駅員がいなかったホームに、11年ぶりに駅長が立つ。そのわきで、子どもたちの無邪気な声が響いた。

 過疎化が進んで利用者が減り、駅が無人となったのは2002年。木造の駅舎は地元の有志に無償で貸し出され、週末だけ開かれる喫茶店として、大正生まれの建物をかろうじて守ってきた。

 今春、市原市内の4小学校が統廃合され、駅を最寄りとする小中一貫校「加茂学園」が開校した。262人の児童・生徒のうち、50人ほどが列車で通うことになった。市と小湊鉄道、国が総額約8000万円を負担し、駅を再整備した。

 構内踏切に遮断機を新設した。信号機やレールを交換し、単線の列車がすれ違えるようにした。上り下りの列車が同時に発着できるようになり、通学時間の運行本数が増えた。駅長に任命されたのはすれ違いをさばく作業に手慣れた72歳のOBだ。喫茶店は改札の横に移された。

 平田千郷ちゃん(10)は新5年生。先生たちに見守られ、四つ先の駅から集団登校している。クラスの人数は7人から34人に増えたが、今までより1時間も早起きしなくてはならない。

 「前の学校とどっちがいい?」。尋ねると、しばらく考えて答えた。「今のほうがいい。たくさん友だちができるから」。ランドセルを揺らしながら、改札を駆けて行った。

 文 曽根牧子撮影 上田頴人

 

沿線ぶらり

 小湊鉄道は五井駅(千葉県市原市)と上総中野駅(大多喜町)を結ぶ39.1キロ。里見駅で列車がすれ違う光景は15年ぶり。鉄道ファンに人気だ。

 高滝駅から送迎バスで10分、映画『星になった少年』ゆかりの市原ぞうの国(TEL0436・88・3001)では5月3日(金・祝)、絵を描く子ゾウ「ゆめ花」が6歳の誕生日を迎える。入園料1800円、小学生900円、3歳以上500円。

 景勝「粟又の滝」へは養老渓谷駅から車で10分。温泉の宿泊には五井駅発の往復運賃を含む1泊2食券も。7500円~。要予約。問い合わせは小湊鉄道へ。

 

 
興味津々
懐石料理
 

 小湊鉄道の懐石料理列車は、食事を味わいながら房総の田園風景を楽しむ約1時間の旅。五井駅を出発し、養老渓谷駅で解散。不定期運行で定員40人。要予約。4000円(往復運賃と料理付き)。団体貸し切りも可。問い合わせは小湊鉄道(0436・21・6771)。

 
 
(2013年4月30日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)