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有田駅(佐賀県、JR佐世保線)

五輪と新幹線 ひっそり記憶

1番線ホームに佐世保行き特急が到着した。今ではかれてしまった池(手前)だが、掘られた当初はコイも放たれていた
1番線ホームに佐世保行き特急が到着した。今ではかれてしまった池(手前)だが、掘られた当初はコイも放たれていた
1番線ホームに佐世保行き特急が到着した。今ではかれてしまった池(手前)だが、掘られた当初はコイも放たれていた 地図

 有田焼の町の玄関駅。1番線ホームの奥に、池と大小の岩に植栽を配した庭園風の一角がある。岩にはめ込まれた陶器の銘板には、1964年の二つの事業を「永久に記念して本苑(えん)の造苑を発起せり。有田駅全職員は炎天下に汗を流すこと五十余日……」。東京オリンピックの開催と東海道新幹線開業を記念して、駅員総出でつくった庭だ。

 別の銘板には汗を流した駅員約50人の名前がずらり。その1人、有田駅に40年間勤めた枝国和夫さん(85)が振り返る。「日本全体が盛り上がっている中、殺風景だった駅の景観を良くしようと、庭造りが趣味だった職員が中心になってつくったんです。駅前のタクシー会社や近所の人たちも手伝ってくれました」

 食堂を営む池田京子さん(80)も、父の末一さん(故人)とともに庭づくりを手伝った。リヤカーを引いて、近くの農家にツツジをもらいに行ったという。店で売っていた羊羹(ようかん)をお礼に差し出したが、受け取らなかったそうだ。末一さんの名前も、タクシー会社や運送会社などと並んで銘板に刻まれている。

 池にはかつて水が岩を伝って流れ落ちていたというが、今は水はかれ、落ち葉が底を覆っていた。今年3月、豪華寝台列車「ななつ星」の停車駅になったのに合わせて池の周りに置かれた白磁の照明が真新しい。

 「旅情の慰となれば幸いなり」。銘板の文章はそう続いていた。

文 土田ゆかり撮影 比田勝大直 

沿線ぶらり

 JR佐世保線は肥前山口駅(佐賀県江北町)と佐世保駅(長崎県佐世保市)を結ぶ48.8キロ。有田駅(佐賀県有田町)には松浦鉄道も乗り入れている。

 隣の上有田駅からすぐの有田内山伝統的建造物群保存地区には江戸時代後期から昭和初期までの建造物が並ぶ。有田館(TEL0955・41・1300)では、有田焼のからくり人形が民話「黒髪山の大蛇退治」を演じる。徒歩15分。観覧料200円。武雄温泉駅から徒歩約10分の武雄温泉楼門は辰野金吾設計。竜宮城を思わせる建物で国の重要文化財。問い合わせは武雄市観光協会(0954・23・7766)。

 

 興味津々
県立九州陶磁文化館
 

 駅から徒歩12分の県立九州陶磁文化館(TEL0955・43・3681)では江戸時代の有田焼や九州各地の陶磁器を展示。マイセンの磁器でできた25個の鐘が時を告げる。写真は有田焼のからくりオルゴール時計。午前9時~午後5時。(祝)を除く(月)休み。

(2014年11月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)