高さ12メートルの巨石を祭る磐船神社には、巨石の隙間でできた空間があります。昔から修験者が訪れるこの岩場は、「通り抜けるだけで行になる」と伝えられ、年間5千人超が訪れています。
取材・文/山田絵理佳
写真/塚原紘
四方八方を巨石に囲まれた空間を通り抜けると、運が好転する――。そんなうわさを耳にし、大阪・交野市の磐船(いわふね)神社を訪れた。
ご神体は「天の磐船」と呼ばれる高さ12メートルの巨石。天照大神(あまてらすおおみかみ)の御孫神がこの大岩に乗って降臨したと伝えられている。
「天の磐船」の奥の階段を下った地下に広がる、巨石の隙間でできた空間を通り抜けるのが、「岩窟めぐり」。修験者らも訪れるれっきとした修行場で、年間5千人超が全国各地からやって来る。
岩窟めぐりに出発
社務所に荷物を預け、白いたすきを身につける。滑りにくい靴に履き替えたら出発だ。階段を下りると、ひんやりとした空気にサラサラという水の音。薄暗い空間に巨石の隙間から光が幻想的に降り注ぐ。
目の前には、石の上に頼りなくかかる細い橋。石に書かれた白い矢印を頼りに、前に進む。はいつくばったり、よじのぼったり。不安定な足場に、自然と意識が集中する。「楽に通れてしまうと行にならないから、案内はしません」。宮司の西角明彦さんの言葉が脳裏をよぎった。
一番の難所で生まれ変わる
矢印の先を見て、思わずぎょっとする。人が通れるとは思えない小さな穴を指しているのだ。ここは一番の難所。通ることで「生まれ変わる」とされ、運が好転すると言われている。滑り込むようにして通り抜けた先には、空間が大きく開けていた。薄暗い洞窟内から一転、まさに生まれ変わったような気分だ。
続く岩場を進み、額にうっすらと汗がにじむ。20分ほどで出口に到着する頃には、すっきりとした気分に。岩窟めぐりを終えて戻ってくると、人が変わったように謙虚になっている人もいるそうだ。「不思議だねって、社務所の皆で話しています」と西角さんが笑う。「通り抜けるだけで行になる」。そう言われる理由が、わかった気がした。
岩窟めぐり 詳細は問い合わせ 磐船神社(072・891・2125)。 |
御祭神に祈祷したお守り
御祭神・饒速日命(にぎはやひのみこと)に祈祷(きとう)した同社オリジナルのお守り。ご祈祷に鈴を使うことから鈴をあしらった。身につけていると運が好転するという。色は赤、青、ピンクの3色。各300円。