歌手でお笑い芸人のタブレット純さんが、自身のエピソードを交えながら昭和歌謡の魅力を紹介します。(撮影協力:ディスクユニオン昭和歌謡館)
では、最後はアニメソング。もっと、自分の原点を探ると、アニメの歌が出てくるのかな。
これまでお話ししたいろんなジャンルの歌よりもっとさかのぼり、なぜこういう暗い歌が好きなんだろうかと考えていくと、昔の昭和のアニメの歌にたどりつく。昭和のアニメの歌は、特にエンディングが異様に暗くて。たとえば、「元祖天才バカボン」。あんなにはちゃめちゃなギャグ漫画のアニメなのに、終わりの歌になると一転して切ない寂しい歌になる。子ども心に、その終わりの悲しさ、終わっちゃった悲しさも相まってすごい切ない気持ちになって。「元祖天才バカボンの春」という歌があるんですけど、本当にムードコーラスみたいで、歌の出だしが「♪枯葉散る/白いテラスの午後3時/じっとみつめて/ほしいのよ」。今思うと、完全にムード歌謡なんですよね。女性の言葉遣いの歌になっているし。作詞が赤塚不二夫なんでパロディー的に、ですけど。
昭和のアニメとかギャグのものでもペーソスがあった。「元祖天才バカボン」で1回、子どもの頃、すごい、めちゃめちゃ泣いたことがあって兄がびっくりしたことがあった。それはただ、レレレのおじさんが引っ越すという話なんですけど、終わった後にあの歌が流れ、それが切なさに追い打ちをかけるんです。
夕方の再放送のテイストですかねぇ。当時、毎日どのチャンネルでも何かしらやっていましたよね。小学校から帰ってきて、家に1人でいたりすると、なんだかちょっと我に返る。そんなひとときに見る再放送のアニメで最後に打ちのめされるような夕闇感。歌手の藤圭子をモデルにした「さすらいの太陽」や「アタックNo.1」「母をたずねて三千里」とかも。子ども向けのアニメにしては、哀愁漂う世界観の作品が多かった気がする。
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