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輝北天球館 鹿児島県鹿屋市

宇宙と大地つなぐデザイン

見る角度や昼夜で異なる表情を見せる
見る角度や昼夜で異なる表情を見せる
見る角度や昼夜で異なる表情を見せる 研修室上部を全長33・33メートルの「ロータス」が突き抜ける

まるで巨大な尻尾を持つ昆虫? 部品が複雑に組み合う機械のようにも見える。独特な造形に込めた狙いとは?

 もくもくと煙を吐く桜島を対岸に望む、鹿児島県鹿屋市の高台。様々な形が入り組んだ不思議な造形の建物が、桜島に負けない存在感を放っている。

 NPO法人まちづくり輝北が管理運営する天文台「輝北天球館」だ。旧環境庁主催の「全国星空継続観測」で、輝北町(現鹿屋市)が1991年から4年連続「きれいな星空日本一」に選ばれたことから建設が進められ、95年に完成した。

 設計者は同県指宿市出身の髙﨑正治さん(66)。宇宙空間と大地を建築で結ぶデザインを目指したという。「生きた桜島に対峙できる強さと、景観を壊さない繊細さのバランスを大事にした」と話す。

 建物は主に、アーモンド形の研修室とドーム形の天体観測室を備えた構造体からなる。これらを下から支える柱がまるで昆虫の脚のように斜めに林立し、今にも動き出しそうな迫力だ。うち3本の柱は研修室を貫き、空に伸び、花を咲かせるような形状。「ロータス」と名付けられたこの柱は、避雷針の役割も担う。

 鉄筋コンクリートの打ちっ放し仕上げで、降り積もった桜島の火山灰が複雑なグレーの色調をつくり、奇抜な外観ながら不思議と風景になじんでいる。柱を縫うように設置された通路や広場は秘密基地の趣。「子どもたちはジブリ映画の『ハウルの動く城』みたいだ、って喜びます」と職員の有馬明菜さん(37)。

 深夜訪れると、満天の星が目前に迫るような迫力。夜明け近くまで星空を楽しむ人が絶えなかった。

(安達麻里子、写真も)

 DATA

  設計:髙﨑正治都市建築設計事務所
  階数:地上4階
  用途:天文台、コミュニティー施設
  完成:1995年7月

 《最寄り駅》 国分駅から車で40分
 ※新型コロナウイルスの影響で25日まで小中高生入館不可


建モノがたり

 約60年間、日常的に噴火している桜島。しっかり学ぶなら桜島ビジターセンター(問い合わせは099・293・2443)へ。車なら、輝北天球館のある大隅半島から陸路で行ける。

(2020年3月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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